山陰海岸ジオパーク野外学習ハンドブック(鳥取砂丘を中心にして)

砂丘から見える景色

位置
鳥取市福部町(図1)

地点1:鳥取砂丘
馬の背
  北緯
 35°32’43.5”
  東経
134°13’50.1”


地点2:有島武郎歌碑の北方

  北緯
 35°32’08.0”
  東経
134°13’07.5”


図1 
観察地点(国土地理院発行 2.5万分の1地形図「鳥取北部」)

アクセス

JR最寄駅:鳥取駅

バス停:鳥取駅前バスセンターから周遊

バス”麒麟獅子”か路線バス”鳥取砂丘
 
・岩井温泉方面行”で鳥取砂丘下車



自家用車駐車場:
  地点1:みやげもの店駐車場
  地点2:有島武郎歌碑前(4~5台分)

選定理由

樹木や建物にさえぎられることなく,海
岸や山地の雄大な地形を遠望することができる(図2~図4).


図2
 快晴の日には西に,遙か大山まで遠望できる[地点1から]

指定の有無

国立公園(地点1)
鳥取大学乾燥地研究センター(地点2)

特徴・地形地質の意義

陸と海が接する沿岸地帯の地形,そして,
その形成かかわる地殻変動を理解する絶好
のロケーションである.

利用の状況

地点1:鳥取砂丘の訪問者は必ずといってよいほど立ち寄る景勝地である.
地点2:ほとんど利用されていない.有島
武郎の歌碑から,砂丘地を歩いて約 200m.

周辺の環境

地点1:砂丘地(観光地)

地点2:パッチ状被植砂丘地

観察者の対象

地点1:小・中・高・一般

 
 (30mほどの高低差あり)


地点2:高・一般


 (アクセス道はないので,要注意)


図3  沖を泳ぐクジラにたとえられる海士島は,”竜宮城へむかう
亀”にもみえる[地点1から]


図4 
台形の駟馳山から東は荒磯になり,遠く丹後半島まで風光
 
 
 
明媚な岩石海岸がつづく[地点1から]


図5
 鳥取の「南高北低」の山
(鷲峰山~長尾鼻まで傾斜4°~3°のなめらかな尾根が連なる)[地点2から]

解説

 私たちがふだん見ている山はデコボコしている.ところが鳥取砂丘から西を遠望すると,山のイメージが一変する.鳥取の山は日本海へ向かって緩やかに傾いていて(図2・図5),鷲峰山から長尾鼻までほぼ一定の3°~4°の勾配になっている(ただし,高所は旺盛な侵食作用のために凹凸).鳥取砂丘からは鳥取の山の特徴を見てとることができ,それは「南高北低」の一言で形容できる.3°~4°の勾配は,私たちの生活感覚ではわずかな角度であるが,岡山県境まで延ばすと山地高度は 1,500mを超える.冬には,雪雲が山に沿って上昇し,たくさんの雪を降らせることになる.

観察の視点

 「南高北低」の山は,どのようにしてできたのだろうか?
詳しくは,関連文献をみていただくことにして,ここでは,その結論だけを紹介する.数 100万年前の鳥取は,河川が陸地を海水準近くまで浸食し尽くした平原(準平原:図6左)であった.その後,南上がりの隆起運動が起こり,南高北低の山地(傾動準平原:図6右)は河川によって侵食されながら隆起をつづけ,今日みられる地形ができあがった.山なみに見られる3 °~4°の勾配(図2・図5)は,かつての準平原のなごりである.



図6
鳥取の山の形成モデル


山陰ジオパークでの意義

 「南高北低」の山なみは,鳥取県のみならず,山陰全域(大山や三瓶山などの火山を除く)に共通する地形的特徴である.その全体像を「超ワイド画面」で見ることができる鳥取砂丘は,稀少ない地形観察ロケーションである.この山なみは,砂丘とともに,鳥取砂丘が誇るもう一つの雄大な景観であり,学習や観光に活用できる貴重な地域資源でもある.


教科との関係


 理科では地学分野の地殻変動や気象,社会では地理分野の地形形成史などの教材として,そして,何よりも郷土への理解を深めるうえで貴重な景観である.



緊急時の連絡先


☆最寄りの交番:砂丘駐在所[0857-23-4067] 
☆近くの病院:鳥取中央病院[0857-26-7111]


文献


矢野孝雄(2009)大地のおいたちと地域環境.岡田昭明編,地域環境学への招待,5-14,三恵社.

(矢野孝雄;2008.12.24)