山陰海岸ジオパーク野外学習ハンドブック(鳥取砂丘を中心にして)

鳥取東部の浜と磯

選定理由

鳥取砂丘や浦富海岸での野外学習に際して,鳥取東部海岸の概要を理解しておくと,より大きな 学習効果が期待される.

ねらい

広域的な地形-地質構造を把握するには,地形図判読が有効である.ここでは国土地理院発行 2.5万分の1地形図「浜村」「鳥取北部」「浦富」「田後」を利用して鳥取県東部海岸の特徴を理解 する室内実習を解説する.


図1 鳥取砂丘

実習の手順

学習のねらいの説明とグループ編成砂浜海岸と岩石海岸の説明地形図・地図記号の説明地形図判読 (砂浜海岸と岩石海岸の塗り分け)考察と討論

  1. 砂浜海岸や砂丘(浜)はどこにあるか?
  2. 岩石海岸(磯)はどこにあるか?
  3. 岩石海岸(磯)はどこにあるか?


図2 浦富海岸(鴨ヶ磯)

浜と磯(図3)

浜と磯の定義

  1. 砂浜海岸(浜) 砂が堆積している海岸
  2. 岩石海岸(磯) 岩盤が露出している海岸

浜と磯のイメージ写真の入手先
鳥取県ホームページ「写真ライブラリー」

http://www.pref.tottori.jp/kouhou/sphoto/

2.5万分の1地形図の入手方法[単価 270円]

今井書店各店舗 0857-51-7020(吉成店)など
https://www1.imaibooks.co.jp/index1.html


図3 岩石海岸と砂浜海岸(東浜)

地図記号(図4)と塗色方法(図5)


図5 砂浜海岸と岩石海岸の塗色方法 (国土地理院発行2.5万分の1地形図「田後」)


図4 地図記号


図4 東部山陰海岸における岩石海岸の分布と袋川高度不連続

解説

鳥取県東部〜兵庫県北西部には,岩石海岸と砂浜海岸が交互に配置する(図4).岩石海岸は山が海に接する ところに,砂浜海岸は平野や沿岸低地が海に接するところにできている。前者は山をつくっている岩石が海岸侵食 によって露出したところで,後者は河川で運搬された砂が堆積したところである.広くみると,鳥取砂丘よりも 東側では岩石海岸がつづき,西側では砂浜海岸が卓越する.これは,袋川高度不連続 (地形高度の線状の急変帯:図5・図6)を境に,北東側の扇ノ山・氷ノ山山塊が隆起しているためで,山地高度 も北東側で高く,積雪量も急増する.鳥取砂丘は袋川高度不連続の東側に位置しながら,長大な砂浜海岸をつくっ ている.高度不連続よりも東側にあるために,砂丘地下の岩盤の高度は高く,その表面は大きく起伏していて, 岩盤を覆う砂丘の凹凸を大きくする原因の1つになっている.

図5 袋川高度不連続に沿う急斜面(久松山山麓,左が海側) 図6 袋川高度不連続の形成(古期断層崖の浸食)

文献

玉尾純弥・矢野孝雄(2008)鳥取平野の地形-地質構造—平野形成にかかわる地殻変動—.鳥取地学会誌,12,15-28.
矢野孝雄(2009)大地のおいたちと地域環境.岡田昭明編,地域環境学への招待,5-14, 三恵社.

(矢野孝雄;2009.3.23)