山陰海岸ジオパーク野外学習ハンドブック(鳥取砂丘を中心にして)

季節ごとの日出・日入・漁り火

選定理由

 砂丘地内は,樹木や建物にさえぎられることなく見渡すことができ,日の出,日の入りの太陽の位置を観察するには絶好の地形である。しかも,日の出,日の入りの位置が夏は海側に,春・秋・冬は陸側にと変化し,季節による違いが観察できる。また,夏から秋にかけては,日没後,海の向こうに漁り火が広がり,幻想的な景色を味わうことができる。

位置(観察に適した地点:図1)

 馬の背の上から観察すると障害物なく遠くまで眺めることができる。  北緯 35°32′43.5″ 東経 134°13′50.1″


図1 観察地点

鳥取砂丘から見た日の出,日の入り

【日の出】
 馬の背(図1)より見ると,日の出は砂丘東側にある山々から太陽が現れる。日の出の予定時刻頃から,山の周辺部が明るくなり始め,遅れること約10~15分程度して,山から覗くようにして太陽が昇ってくる。春分の日の頃は,鳥取県では午前6時ごろが日の出時刻だが,山々があるため約15分遅れて太陽が昇ってくる。馬の背から見ると,方角は鳥取砂丘ジオパークセンターの方向とほぼ一致する。


写真1 鳥取砂丘馬の背(図1)より見た日の出
(撮影日 平成22年3月23日午前6時15分頃)

【日の入り】
 図2~4は,地形描画ソフト「カシミール3D」を用いて,季節ごとの日の入りの位置の違いを描いたものである(この図では,図1の観察地点よりやや東側より観察したように描いている)。
 この図からも,春から秋にかけて太陽は海側に沈み,秋から春にかけて陸側に沈むことがわかる。  鳥取砂丘から見る,日本海に沈む夕日はまた格別である。空,海,砂丘が茜色に染まる眺めは,砂丘が見せる姿の中で最も美しいと言えるだろう。  また,日没の1時間前くらいからが,風紋の写真を撮るのに最も適した時間帯である。太陽の角度が低くなることで風紋の陰影がくっきりと出て,よい写真が撮れる。


図2 日の入りの位置(夏至)


図3 日の入りの位置(秋分)


図4 日の入りの位置(冬至)

漁り火

 夕暮れ時に砂丘を訪れると,水平線近くに明るい照明が広がり,一瞬,向こう岸の街が見えているのかと錯覚してしまう。
 鳥取の近海では,6月から10月にかけての夜間に白イカ(剣先イカ)漁が行われる。このイカ釣り船の照明が“漁り火(いさりび)”である。一面に広がる漁り火と鳥取砂丘のコラボレーションは絶景であり,昼間とは違う夜の日本海の風景を見ることができる。鳥取県の海岸沿いではどこからでも見られるが,夕暮れ時に鳥取砂丘を訪れることをお薦めする。
 イカ釣りでは,1本の釣り糸にたくさんの擬餌針をつけて釣るが,船上の照明によってこの擬餌針を照らすことでイカを誘う。
 これまでイカ漁の照明には電球が用いられてきたが,この電球を点すための燃料代が高くつくため,最近ではLED(発光ダイオード)を使用するようになってきている。陸から見ても電球とLEDの違いが分かり,おもしろい。LEDの方が省エネであるだけでなく光量も強い。


写真2 鳥取砂丘から見た漁り火


写真3 白兎海岸(山陰海岸ジオパーク最西端)から見た漁り火

(吉田祐一郎・柴田敏和;2010.10.12)