西浦富海岸の地形と地質
位置 岩美町(図1)
●地点1:展望台
北緯 35°35’12.9”
東経 134°17’31.7”
●地点2:鴨ヶ磯
北緯 35°35’21.0”
東経 134°18’03.5”
アクセス[海水浴シーズンは混雑]
JR 最寄駅:山陰本線岩美駅
バス停:岩美駅から日本交通バス鳥取駅行きで約20 分、岩美西小学校前下車
自家用車駐車場:地点1:網代港の北側岸壁
地点2:鴨ヶ磯駐車場(約10 台分)
選定理由
西浦富海岸では,さまざまな海食地形を観察や(図2~図4),岩石海岸の形成プロセスの理解(図5~図6)ができる.
指定の有無
国立公園(地点1・地点2)
特徴・地形地質の意義
海岸地形と勇壮な景観美が,硬くて白い花こう岩・節理(規則的割れ目)・波浪・重力によってつられたことを理解できるすぐれた観察スポットである.
利用の状況
地点1:あまり利用されていない.網代港から中国近畿連絡自然歩道で約10 分.
海岸を広く眺めることができる景勝地である.
地点2:海水浴などに頻繁に利用される.
駐車場から海岸まで木製階段が整備されている(下り5分,上り15 分).
図1 観察地点(国土地理院発行2.5 万分の1地形図「田後」)
図2 勇壮で変化に富む造形美,碧海/白岩/青松が織りなす色彩美
図3 海食洞(花こう岩の節理に沿う波浪浸食によってできた)
図4 洞門(かつての海食洞の,陸寄りの岩盤が浸食されることによってできた石の橋:「千貫松島」)
図5 西浦富海岸における海食地形の形成モデル
解説
西浦富海岸は硬い花こう岩でできていて,浸食作用にたいして強い抵抗力(耐食性)をもつ.この花こう岩には,地殻変動による力が加わって,2方向の節理が数多く生じている.地形図に描かれた海岸線の凹凸は,これら2系統の節理に沿う直線の組み合わせでできていて,海食崖・半島・離れ島も角ばった形をしている(図1・図2).
節理系A は北北西方向で東へ50°~60°傾斜する.節理系B は東北東方向で北へ70°~80°傾斜し,ところどころで幅数m の破砕帯をつくる.北西からおしよせる冬期の激しい波浪は,節理系A に沿って花こう岩を浸食し,海食洞(図6-(1))や(図6-(2))入江をつくる.浸食が節理系B の破砕帯までたっすると,東北東方向の浸食作用が急速に進む(図6-(3)~(4)).海食崖にうがたれた海食洞の天井の岩石が重力よって崩落し,いっそう浸食が進む結果(図6-(5)),複雑にいりくんだ岩石海岸が形成された(図6-(6)).
海岸線は時間とともに陸側へ後退し,硬い花こう岩でできた海食崖の高さはしだいに高くなる.こうして,雄大で変化に富む造形美と,白色の花こう岩が紺碧の海と緑の松山に映える色彩美を兼備する美しい景観美ができあがった(図2).
山陰ジオパークでの意義
鳥取砂丘の曲線的で優美な砂浜海岸と浦富海岸の荒々しく勇壮な岩石海岸の対照性は,山陰海岸の景観美を象徴するものである.西浦富海岸は,岩石海岸の美しい自然景観が悠久の歴史のなかで形成されたことを学ぶことができる絶好の学習スポットである.
教科との関係
地学・地理では海岸地形や浸食作用を理解するための教材になり,また,郷土への理解を深めるための貴重な素材である.
遊覧船からの観察・観光
山陰海岸島めぐり遊覧船[有料](http://www.yourun1000.com/) を利用すると,浦富海岸の地形-地質をつぶさに観察でき,景観美を楽しむことができる.
緊急時の連絡先
☆最寄りの交番:大谷駐在所[0857-73-1117] ☆近くの病院:岩美病院[0857-73-1421]