山陰海岸ジオパーク野外学習ハンドブック(鳥取砂丘を中心にして)

砂丘および周辺の地下構造(物理探査による解析)

位置

鳥取砂丘(浜坂砂丘,観光砂丘,福部砂丘)とその周辺


図1 対象地域の位置(微動および重力観測地点)

選定理由

物理探査法(微動探査法と重力探査法)による地下構造探査の結果をもとに,鳥取砂丘の地下構造を面的に眺めると,地表の地形とは違う地下の様子を知ることができる。

地形地質の意義

鳥取砂丘の形成史や地形地質を考える際の重要な情報となる。

解説

1)地下構造探査について
 物理探査法は専用の測定機器により地盤の物理量を直接測定して地下構造を探査する方法である。この探査の一種である微動探査法と重力探査法は,計測が比較的容易で対象地域を高密度に探査ができる。その結果として,深さ数m~数百mまでの地下構造を把握することができる。ここでは,これらの探査法を用いて,鳥取砂丘およびその周辺で得られた地下構造探査の結果として,浅部および深部の基盤(岩盤)の深さ分布を示す。

2)微動探査の結果
 微動探査では高感度の地震計を用いて,微動という地表に存在する微小な振動を測定する。鳥取砂丘やその周辺で,微動観測が行われた地点を図1に示す。この微動の測定記録から,地盤特性に関する情報を抽出して,地下の速度構造を推定する。図2は解析結果として,堆積層(砂層)と基盤層(岩盤層)の2層の速度構造モデルで計算された岩盤層までの深さ(基盤面)を等高線で表したものである。この図から,現在の砂丘の地形とは関係なく基盤面に起伏があることがわかる。傾向としては,両端の浜坂砂丘,福部砂丘で基盤が深く,それらの間の観光砂丘周辺では基盤が浅いことがわかる。


図2 微動探査法による基盤深度分布

3)重力探査の結果
 重力探査では,ごく微小な重力の違いを測定出来る高精度な重力計を用いて,重力の大きさを測定する。鳥取砂丘やその周辺で,重力観測が行われた地点を図1に示す。測定した重力値から,様々な要因を取り除き,地下の密度の不均質によって生じる重力異常を抽出し,地下の密度構造を推定する。例えば砂丘地であれば,浸食や断層による基盤の起伏に応じて重力異常が変化すると考えられる。図3はこの関係を利用して,堆積層と基盤層の2層の密度構造モデルで計算された基盤までの深さ分布を等高線で示したものである。この図から,前述の微動探査法による結果と同様に,浜坂砂丘,福部砂丘で基盤が深く,それらの間の観光砂丘周辺で浅いことがわかる。


図3 重力探査法による基盤深度分布

(野口竜也;2010.12.22)