山陰海岸ジオパーク野外学習ハンドブック(鳥取砂丘を中心にして)

砂丘の展望点

位置 鳥取砂丘の周辺地域(図1,2)

地点1:砂丘センター展望台
北緯35°32’29” 東経134°14’19”
地点2:砂丘ゴルフ倶楽部駐車場付近
北緯35°31’35” 東経134°13’46”
地点3:湯山の大露頭上のラッキョ畑
北緯35°32’29” 東経134°14’33”
地点4:山湯山から林道摩尼山線を登る
北緯35°31’53” 東経134°15’40”


図1 観察地点(国土地理院発行2.5万分の1地形図「鳥取北部」)

選定理由

鳥取砂丘を遠望でき,全体像が把握できる。観光砂丘と福部砂丘の地形や土地利用の違いを観察できる。

地形地質の意義

砂丘列の存在,さらには砂丘列ごとの色合いの違いや砂丘発達の差違などを観察できる。


図2 観察地点(国土地理院発行2.5万分の1地形図「浦富」)

解説

1)砂丘センター展望台(図3,4)
 第2砂丘列は灰白色を,第3砂丘列は淡い黄褐色を示す。前者には砂浜から転がってくる黒色岩片の粗粒砂が多く混じり,細粒砂も白色が多い。一方,後者の細粒砂は,長年の風化作用が働き,砂粒表面が酸化鉄の皮膜で覆われて黄褐色を呈する。

2)砂丘ゴルフ倶楽部 駐車場周辺(図5,6)
多鯰ヶ池と砂丘の関係,第3砂丘列に位置する追後スリバチや火山灰層露出地,第2砂丘列と日本海が遠望できる。

3)湯山の大露頭上のラッキョ畑(図7)
福部砂丘が東方の海士に向けて高度を増している様子や,湯山低地や背後の山地との対照性が一望できる。


図3 砂丘センター展望台(地点1)より北西を望む
A-A’:第2砂丘列の稜線,B-B’:第3砂丘列の稜線の一部(観光客が多数見える)


図4 砂丘センター展望台より西を望む
遠方(第1砂丘列の背後)には,千代川河口の突堤が見える。


図5 第3砂丘列に点在する火山灰層露出地(通称:あかはげ)と海に浮かぶ鯨のような海士島(鳥取ゴルフ倶楽部駐車場より)

図6 砂丘ゴルフ倶楽部よりみた追後スリバチ 図7 福部砂丘を東方に望む

4)山湯山から林道摩尼山線へ(図8)
ラッキョウ畑に利用された福部砂丘と湯山干拓地の対照性が観察できる。湯山にはかつて池が存在した。稲葉佳景無駄安留記に当時の景観がスケッチに残されている。また明治30・31年測図の5万分の1地形図でも湯山池を確認できる。近世以降に繰り返し実施された流水客土と排水路の設置により干拓が進められた。


図8 林道摩尼山線から眺める福部砂丘と湯山干拓地

観察の視点

海岸に沿って発達する砂丘(海岸砂丘)は,砂浜の細粒砂が風により陸側に吹き寄せられて形成された地形である。砂丘列は冬季の卓越強風(北西風)に直交する稜線を持ち,横列砂丘となっている。砂丘列はしばしば急斜面(32°:砂の安息角)と緩斜面(7~8°)で構成される。なぜ7~8°になるかは不明である。鳥取砂丘には湿潤地域に発達する海岸砂丘の景観が良く保存されており,数10万年に及ぶと思われる砂丘の成立史が今後,ボーリング調査やOSL年代測定などで解明されることであろう。

文献・参考資料

福部村史編纂委員会編(1981)福部村誌,1049pp.

執筆者のコメント

宮本常一氏が父・善十郎氏から受けた10ヶ条の家訓にもあるように,高所から対象をよく眺め,全体像をつかむとともに,特徴あるものの配置をおぼえておくことは,現地調査においてとても大切なプロセスです。

(小玉芳敬;2010.01.07)