• 鳥取東高等学校出身
  • 鳥取大学地域学部地域学科人間形成コース

2020年卒業

鳥取市立青谷小学校(5年生担任)

中 知恵美(なか ちえみ)

子どもが本当の力を身につけるために。
教えること、向き合うことにまっすぐに。

「今日は少し天気が悪いのですが、晴れた夏の日には、本当に海が青々としていて、とてもきれいなんです。私自身もこの青谷小学校で育ったので、こうして教員として戻ってこられたことを、感慨深く感じています」

3階から望む雄大な日本海。この日は冬の山陰を表すかのような鉛色の空が広がっていたが、夏には一面に青い景色が広がるという。かつて自らも学んだ校舎のまっすぐな廊下を歩きながら、中知恵美先生は穏やかに語る。

教員になって5年目。「もともと子どもが好きで、教えることの楽しさを感じていました。それが、小学校教員を目指したきっかけです」と話す。子どもたちの成長を間近で支え、ともに歩む毎日は、試行錯誤の連続でありながら、大きなやりがいに満ちている。

「教える」ことって楽しい

「子どもと関わる仕事を志した思いは、昔からあって。11歳年の離れた弟の授業参観に行ったとき、先生と子どもたちの間にある信頼関係がとても印象的でした。先生は生き生きとされ、子どもたちは楽しそうで。その姿に憧れを抱いたことを覚えています。でも、正直に言うと、幼稚園の先生か、小学校の先生か決めかねていたんです」

その迷いに答えが出たのは、鳥取大学在学中だった。授業参観や教育実習を通して、教室で子どもたちと向き合う面白さを実感。さらに、子ども向けイベントを企画するサークル活動や学童保育での経験を重ねる中で、「教えることは楽しい」と確信していった。

教員となった今、その思いは変わらない。しかしそれは、楽しいだけではない。どうすればよりわかりやすく伝わるのか。どうすれば子どもたちが主体的に学べるのか。日々問い続ける毎日でもある。

「年間指導計画はありますが、1年目は見通しを持つことが難しく、戸惑うことも多くありました。経験を重ねる中で少しずつ余裕が生まれ、教材研究を重ねながら、発問の工夫や導入の仕方など、子どもたちの実態に合わせて考えられるようになってきました」

学校の外にいても、ふとした瞬間に授業のヒントを探している自分がいるという。「この箱、算数の図形の授業で使えるかもしれない」。そんな小さな気づきの積み重ねが、日々の授業を支えている。

「準備を重ねた分だけ、子どもたちの反応が返ってくる。やりがいを感じる瞬間です。うまくいかなければ、次はどうするかを考える。日々、その繰り返しですね」

子どもの「本当の力」を引き出したい

「この間、みんながやってみたいと言っていた砂糖、用意してきました」

昼休み明け、理科室に移動して始まった理科の授業。「もののとけ方」をテーマに、黒板へと迷いなく板書していく。本来は食塩とミョウバンで行う実験に、子どもたちの声を受けて砂糖を加えた。

「教科書にはありませんでしたが、子どもたちの“やってみたい”という気持ちを大切にしたいと思いました。子どもたちに本物の力を身につけてほしいんです。それは、自分で考え、友達と話し合いながら解決していく力です。言われたからやるのではなく、自分で納得して学ぶことが大切だと思っています」

その姿勢は、経験を重ねる中で培われてきたものだ。

「1年目は、どうしても教師主導の授業になっていました。子ども同士が学び合う形に導くことが難しかったんです。先輩の先生方の授業を見せていただく中で、子どもたちが主体的に学ぶ姿に驚きました。そこには、意図的な仕掛けや問いの工夫があり、教員としての力量を感じました」

より良い授業を目指し、同僚に相談しながら準備を重ねる。「子どもの目線に立つとどう見えるか。本当にこの進め方でよいのかを常に考えています」。各グループの実験の様子を丁寧に見守るその眼差しは、真剣でありながら柔らかい。子どもたちの小さな気づきをすくい上げ、次の問いへとつなげていく。

「自主性を引き出すには、関係性が何より大切だと思っています。管理的に押し付けるのではなく、隣に立つ目線で、子どもたちの『こうありたい』をすくい上げ、伸ばしていきたいです」

子どもも、自分も、日々成長

子どもたちの隣で、その成長を見守る。そのために、中先生が大切にしていることは自分自身が一人の人として、子どもたちの手本になることだという。

「変なプライドは捨てて、子どもたちと人として向き合うことです。だから、こちらが間違っていると思った時はちゃんと『ごめんなさい』と謝りますし、何かをしてもらった時は『ありがとう』と伝えること。子どもたちはちゃんと見ているし、わかるんですよね。当たり前のことですけど、そういうことを大事にしています」

向き合う、ということを教えてくれるのも、子どもたちだという。今でも嬉しい思い出になっていることがある。以前受け持った子がいて、言葉がきつくなったり、つい手が出てしまったりしてしまう子がいたが、1年間向き合うことで少しずつ関係性が築けるようになったという。

「年度の最終日に手紙をくれたんですよ。『先生が大好きです、先生が担任でよかったです』と書いてあって、嬉しくて涙が出ましたね。子どもたちの変化、成長を一番近くで見られるというのが、教員という仕事の魅力だと思っています」

それは、大きな行事のときだけではない。日々の何気ない瞬間の中にもある。嬉しさや感動、時には悔しさも含めて、これほどまでに心が動く仕事は多くない。教員とは、そんな仕事なのだ。

「子どもたちの成長とともに、こちらが学ばせてもらうことも多くて。まだまだ未熟ですけど、一緒に成長しているんだなぁと思っています」

最近嬉しかったことはなんですか、と尋ねると、ふっと笑みが溢れた。もうすぐやってくる中先生の誕生日を祝うために、数カ月前から子どもたちが誕生日パーティーを開く計画をしてくれているのだとか。

「そういう予期せぬサプライズもある。そんな日々が、楽しいですね」

※教員のプロフィールは2025年度の情報です。