レポート – 地域を知り、地域で実践するアートマネジメント講座2020 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020 Fri, 19 Mar 2021 04:34:59 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.4.4 [実践活動編A] 地域の記憶を記録するためのメディアを探るプロジェクト / にんげん研究会 定例ゼミ「いつかのなにかのわたしの日記」開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/a_report/ Fri, 19 Mar 2021 02:47:53 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5809

鳥取大学から松崎までおおよそ50分ほどかけて移動し、そこにある複合滞在スペース「たみ」で定例ゼミを行う。にんげん研究会はこの「手間」を大切にしてきた。大学ではない場所に集まり、学生だけでなく地域の人々とも関わりながら、密なコミュニケーションを重ねることに意義を見出していた。

しかし今年度はコロナ禍により、同様の実施形態を続けることができなくなり、期せずしてZOOMを用いたオンライン実施となった。当初は「身近な人物へのインタビュー」を行い、それを映像メディアなどで記録・発信する方法と思想を実践的に学ぶ予定であったが、「人に会いに行く」ことが困難になった状況を踏まえて、「いつかのなにかのわたしの日記」と題した新たなテーマを考案。人に会えない状況自体や、その中でも出会うことができた人や物について「日記」形式で記述し、毎月1回報告し合う場を設けた。

コーディネーターの蛇谷りえ氏と、ゲストリポーターの金川晋吾氏、今林由佳氏が、受講生の報告やその他の発言を拾い、感想や質問を投げかけ、それに対してまた受講生が返答する。このプロセスを繰り返すことで、オンライン形式だからこそ際立つ「記憶」や「記録」のあり方に気づいたり、反対に、対面形式では問題にならなかったことがオンラインでは非常に困難なコミュニケーションの問題として立ちはだかることに気づくなど、例年とは異なる様々な発見があった。また10月以降は、これまでに発表された「日記」を振り返る時間を設け、個々人のテキストや発言について可能なかぎり手厚く検討するように心がけた。

このように、オンライン実施という初めての試みに伴う様々な困難やトラブルに直面しながらも、その都度、教員とコーディネーター、ゲストリポーター間で議論し、受講生の意見も反映しながらトライ&エラーを繰り返していった。結果的に、「メディア」「記憶」「記録」、そして「コミュニケーション」に対する考え方を根本的に見直し、それぞれの複雑に絡み合った関係性を解きほぐして理解を深める機会になったと思う。

その試行錯誤の過程も含め、本年度の定例ゼミの活動内容は、蛇谷りえ氏、金川晋吾氏、今林由佳氏にそれぞれの視点から制作していただいた事業報告映像に記録されている。定例ゼミの配信映像・音声を主な素材としつつも、あえて映像を排して音声のみを残したり、アニメーションを導入するなど、この映像自体が「地域の記憶を記録するためのメディアを探る」取り組みの一つの実践として見ることができる。「にんげん研究会」への参加経験がある方にもない方にも、ぜひご覧いただきたい。

事業報告映像(蛇谷りえ)

事業報告映像(金川晋吾)

事業報告映像(今林由佳)

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[実践活動編E] ことばの再発明 / 記録集2020-21刊行〜本講座まとめ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/kotoba_archive_report/ Fri, 12 Mar 2021 01:25:42 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5747

「ことばの再発明」共同企画者:佐々木友輔・蔵多優美と受講生:音泉寧々、中村友紀、にゃろめけりー

この度、2020年6月から2021年1月にかけて、鳥取大学地域学部・佐々木研究室とコーディネーターの蔵多優美との共同企画として開催した連続講座「ことばの再発明」の記録集を刊行いたしました。「ことばの再発明」は、鳥取で活動するアーティスト、クリエイター、デザイナー、パフォーマーなど広い意味での表現者=「つくる」人を対象として、自身の作品や活動を適切に言語化し、他者に伝える技術を学ぶ場を作る試み。本書ではその思想と実践、そして受講生である「つくる」人たちの魅力を紹介します。講師によるコラムや受講生の作品・活動紹介の他、すでにウェブで公開している各講座や成果発表展のレポートも収録しています。約1年間の活動記録を是非ご覧ください。

「ことばの再発明」共同企画者:佐々木友輔・蔵多優美

記録集はこちらからご覧ください

編集後記(記録集2020-21より)

nashinoki(ライター)

「ことばの再発明」のことは開講前から気になっていたのですが、様々な事情から参加することがかないませんでした。今回編集をお手伝いさせていただき、みなさんのやり取りを後から見せていただいて、最初は外側にいるつもりだったのが、いつの間にか自分も自らの言葉を考えざるをえない場所に立っていました。でもなんだかそれが楽しかったです。言葉と表現からは、誰も逃げ隠れできないものだなと改めて感じつつ、その普遍性を嬉しくも思いながら。

佐々木友輔(映像作家)

民藝運動の主導者で、「限界芸術の批評家」としても語られる柳宗悦。彼の思想の源泉である神秘主義は、自己の外部から到来するものを「受け取ること」について考え抜く思想であり、また、語り得ぬものをそれでもなお語ろうとする熱情によって駆動する思想です。新作民藝で知られる鳥取で、かたちを変えて、「受け取ること」と「語ること」を主題とし、考え抜く機会を設けられたのを誇らしく思います。嘘や詭弁が常態化している世界で、この試みが、ことばへの信頼を取り戻す一助になればと願っています。

蔵多優美(デザイナー/コーディネーター)

「ことばの再発明」では、鳥取企画運営チームを各パートで野口さん、藤田さん、nashinokiさんとメンバーを入れ替えながらスリーマンセルで回していました。「三人寄れば文殊の知恵」らしく、頼りながら補いながらもこの講座を運営し、最終的に記録集まで完走したように思います。考える時間が長い分のしんどさがありましたが、それを上回る気付きや「やってよかった!楽しかった!」という喜びの方が強かったです。今後、同様の内容・規模感での「ことばの再発明」をする気は全くないのですが、その時その時に合わせて「ことばの再発明」を続けていきたいと、本書の作成を通じて改めて思っています。コロナ禍で大変な2020年でしたが、「ことばの再発明」があったことで救われた1年でした。今後も新しい未来を開拓出来るように日々前進しあらゆる物事を紡いでいきたいと、心にささやかな祈りを。

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[概論編04] 地域における芸術・文化事業を評価しあおう / 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/04_report/ Fri, 05 Mar 2021 08:52:20 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5687 社会問題の解決、市民参加のまちづくり、企業の新規事業の創出など、様々なテーマで、未来思考の対話の場を企画・運営してきたイノベーション・ファシリテーターの有福さんから、今年も共創を生み出すノウハウを学び、自ら実行したい企画を生み出していった。そして、受講者が持ち寄った企画をもとに、それぞれが相互支援しながら、実行可能な形へつながるようアイデアを精査していった。
具体的には「地域の資源から考えられる、自分ごとで取り組みたいことは?」「成功のポイント(うまくいった未来の姿)は?」「本当に大切にしていることは?」「実現のために不足していることは?」「実現に向けて最初に取り組むことは?」といった問いかけによって、段階的に企画を練り上げていき、最終的に、市内に点在する空き家でのイベント、異なる趣味を持つ人が出会うシェアハウス、星空の下での舞台公演という3つの企画が提案された。今回、オンラインホワイトボードの「Mural」を用いたことで対面と同様の議論ができたことも貴重な経験となった。

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[概論編03] 地域における芸術・文化事業の企画を考えよう / 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/03_report/ Fri, 05 Mar 2021 08:48:25 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5680 社会問題の解決、市民参加のまちづくり、企業の新規事業の創出など、様々なテーマで、未来思考の対話の場を企画・運営してきたイノベーション・ファシリテーターの有福さんから、今年も共創を生み出すノウハウを学び、自ら実行したい企画を生み出していった。そして、受講者が持ち寄った企画をもとに、それぞれが相互支援しながら、実行可能な形へつながるようアイデアを精査していった。
具体的には「地域の資源から考えられる、自分ごとで取り組みたいことは?」「成功のポイント(うまくいった未来の姿)は?」「本当に大切にしていることは?」「実現のために不足していることは?」「実現に向けて最初に取り組むことは?」といった問いかけによって、段階的に企画を練り上げていき、最終的に、市内に点在する空き家でのイベント、異なる趣味を持つ人が出会うシェアハウス、星空の下での舞台公演という3つの企画が提案された。今回、オンラインホワイトボードの「Mural」を用いたことで対面と同様の議論ができたことも貴重な経験となった。

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[概論編02] 非営利組織の資金調達の考え方と実情 / 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/02_report/ Fri, 05 Mar 2021 08:46:26 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5675 視覚障害者向け録音図書のネット配信事業など自ら非営利の活動に携わったのち、NPO等のファンドレイジング力向上事業に従事、日本ファンドレイジング協会の設立にも参画され、現在全国各地でファンドレイジング関連セミナーの講師をされている徳永さんをお招きし、共感の輪をどのように広げたらよいかを考えた。人が寄付しようという気持ちになるためには、「課題への共感」「解決策への納得」「信頼」が必要という方程式や、豊富なメニュー・手軽な寄付方法などを学んだ。非営利活動一般で進むこうした取り組みのアートマネジメントの文脈への応用の事例や可能性も触れられ、いくつかの手法はすぐに実践してみたいという声も寄せられた。

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[概論編01] 文化政策・アートマネジメントの現状と課題 / 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/01_report/ Fri, 05 Mar 2021 08:10:10 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5654 官公庁・芸術団体・文化施設等の文化政策・アートマネジメントに関する調査研究や事業評価などに数多く携わり、現在も福岡県糸島市でアートの現場に身を置きながら、鋭い視点で文化政策の在り方を発信。3度目の登壇となる今回も、最新のトピックを交えながら芸術と社会・地域のあり方を語っていただいた。特に、コロナ禍における文化政策上の対応と現場との乖離を浮き彫りにして福岡県・福岡市への提言まで結び付けたというアンケート調査のお話は示唆に富んでいた。SNSを通じて同様のアンケート実施の取り組みが全国に波及したことを受け、本講座の後半では鳥取ではどんなアンケートが考えられるかを共に考える時間を設けた。

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[実践活動編D] おととからだであそぼう / わらべ館 即興音楽とダンスのワークショップまとめ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/warabe_report/ Fri, 26 Feb 2021 07:50:36 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5638 コロナウィルス対策ということで様々な制限がある中、対面型で(回数は減ったものの)開催を維持できたことは良かったです。感染者が少ない鳥取という場所ゆえでもありますが、わらべ館、ファシリテーター、受講者たちの対応力によるものだと思います。これまでは外部講師の方法を学ぶという形態でしたが、今年度は地元で活動するアーティストたちが、co-fascilitate(ファシリテートを協働する形)を編み出し、主体的にアイデアを出していくようになりました。今年度は特に舞台照明なども含めた環境設定にも意識を向け、作品作りへの可能性を広げることにつながったと感じています。文化庁事業としては終了するものの、今後も継続的に子どもたちとからだで遊ぶ場所として継続させていきたいと考えています。
県内で活動するアーティストたちが学校、公共施設などで活躍するようになるにはシステムから構築していかねばなりません。今後の課題であり、マネジメントとしていかに継続・持続できる形にしていくか考えていかねばと思っています。
最後になりますが、この3年間協力してくれた鳥取アーティストたちの声をご紹介したいと思います。アーティストの皆さん、そしてわらべ館の皆さんありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

きのさいこ

ファシリテーターの声

荻野ちよ(ダンサー)

去年の1月、金子泰子さんと「おめでとう」をテーマに旧正月を祝ったWSから早くも1年。あの時のちょっと浮かれた感覚はすでに過去のものとなりにけり。広場で手洗いから始めたり、距離に配慮したり。割り算に「余り」が出る算数の授業をうまく受け入れられなかった、あの感覚が蘇ります。一方、不思議なことにこの消化不良への「抗体」もまた、このWSから生まれたりもしました。
コロナ禍の中でも、言語を持たない音やダンスをたよって身体や感覚をひらきに来られていた方もいたと思います。私もその一人でした。中断があったものの、何度か開催していただいたことに感謝いたします。

2014年までダンサー/振付家として京都を拠点に国内外で活動(モノクロームサーカス、双子の未亡人所属)。演劇、美術、ファッション、文化人類学など、ジャンルを超えたコラボレーションに積極的に参加。フィリピン山岳地帯で環境をテーマにした子供たちとの作品発表を機に、舞台をおり地域おこし協力隊として琴浦町の土を踏む。現在は「ほうきのジビエ推進協議会」コーディネーター。鳥獣被害対策の向こう側に見え隠れする社会の課題に、これまでのキャリアや視点、思考をフルに活かし、まるっと取り組む。その傍ら、猪脂を使った革用クリームSISI CREAM(登録商標)の製造も行う。

田中悦子(ダンサー)

今年は、2月連続同じテーマで活動する機会があって良かった。というのは、1回目における課題の解決・さらなる発展方法を検討し、すぐ翌月にまだ前回の感覚が残る身体で2回目を迎えることで、より深みのある活動ができていたと感じるからだ。
 また、ゲストの存在もありがたい。今年は新井さんに来ていただいた回で終わってしまったが、ゲストと活動した次の回は、そこでの課題や学んだことを踏まえた回とするというように、状況が許せば、2回をセットと考えるやりかたもよいかもしれない。
 この講座を通して改めて感じたのは、親もいっしょに楽しく過ごす時、子どもも心から楽しめる。今後も、そんな「楽しい」を増やす手助けをすることができたらとてもうれしい。

地域のお祭り音頭と盆踊りが踊り始め。その後、鳥取大学ダンス部を経てダンスコング(鳥取市拠点)で踊り続け、2012年鳥取大学地域学研究科でインクルーシブダンスを学び修士を、2014年英国Trinity Laban Music & Dance Conservatoire でダンスのディプロマを取得。2014年にはアヴィニョン芸術祭に参加したほか、英国拠点のAMICI Dance Theatre Campany の公演に継続的に出演している。 2019年JAPEW-DMILB級取得。

森本みち子(音楽家)

このワークショップは即興がキーワードだったのですが、参加者の多くが活動の内容を純粋に楽しめる内容でした。なので、活動中は大人も子どもも参加者の多くが笑顔と真剣な顔の両方を見せていました。普段の生活ではなかなか体験できない自由に自分の思うまま表現する「即興」ですが、参加しやすい“あそび“の中に、真似て身体を動かすこと、相手に伝えるための音を出すこと、を通して自然に即興出来ていたと思います。日々の営みの中にある感覚を自由に表に出せるこんな場をこれからも鳥取の皆さんと共に楽しみたいです。

大学卒業後、1998年に友人と2人で、障がいの有無にかかわらず音楽を楽しむための場所‘フロイデン音楽教室‘を開く。同音楽教室発表会を毎年開催。2013年より鳥取で地域に関係する人ならば誰でも参加できるコミュニティ ドラムサークル「ドラムサークル がらがら☆どん」を月1回開催。日本インディアンフルートサークル協会会員。各種特別支援学校などでも音楽教育講師を務める。ドラムサークルファシリテーター、インディアンフルートサークルファシリテーター、音楽講師。

高橋智美(音楽家、わらべ館職員)

今年度は新型コロナウイルス対策のため、これまでと違ったやり方に、とまどいや不安を感じていたが、得るものも多かった。
換気が悪いホールから、隣接する芝生広場に会場を移して開催した回では、開放感のある草の上を、休むことなく遊び続けるこどもたちのエネルギーに圧倒された。また、鳥取の講師陣と大学生による、ホールの設備の特徴を活かした大胆なプログラムも生まれた。ぜひ今後も継続して開催したい。

福岡県出身、鳥取市在住。童謡・唱歌とおもちゃのミュージアム「わらべ館」に勤務。イベント企画を担当。とっとりのお手玉の会所属。
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[実践活動編C] School-in-Progress 2020+1 / 事業報告レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/sip_report/ Fri, 26 Feb 2021 07:42:17 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5671 「スクール・イン・プログレス」は、「living/暮らす」と「making/つくる」という人の根源的な営みをキーワードに、既にあるものや普段の生活・日常を見つめ直し、創造性の在処を見つけ、それを自らの内に育む力を身につけるオルタナティヴなアートの学校である。リサーチやフィールドワーク、ワークショップ、ディスカッションといったアーティストの制作プロセスをベースとしたカリキュラムによる実践を通して、感覚をすまし、思考を深め、様々な興味関心を持つ講師や参加者達と出会い、新たな知のきっかけを獲得する機会をひらき、世界を学び直すことを試みている。
過去のスクールは1週間~10日の合宿形式だったが、今回はワークショップやレクチャーを全てオンラインで実施し、テーマを「振りかえること」に焦点化した。具体的には、「過去の『スクール』が何だったのか」「自分自身の生涯」「コロナ以前の生活」を振りかえり、それぞれ、5分ラジオ、自分抽象画、5分ラジオドラマの形でアウトプットを試みた。終盤のレクチャーでは、「歴史修正主義」を題材に、個人を超えた社会や国家の過去を「振りかえる」ことについて議論された。
最終日、二人一組・5分ずつで今回の「スクール」を振りかえってみると、オンライン環境下での「声」の重要性が浮かび上がった。参加者それぞれに、「新しい生活様式」下で世界を想像し、創造する技の手がかりを得たのではないだろうか。

開催レポートは、HOSPITALE PROJECT WEBサイトに順次掲載予定です。
こちらからご覧ください。( http://hospitale-tottori.org/blog/ )
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[実践活動編B] 鳥取の美術&文化リサーチ講座 / 『芸術と文化 鳥取2021』(小取舎)刊行までの講座の軌跡 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/b_report_tsutsui/ Thu, 25 Feb 2021 23:54:07 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5611

『芸術と文化 鳥取2021』(小取舎、2021年3月)

「鳥取の美術&文化リサーチ講座」は、主に2つの柱から成り立つ講座です。ひとつは、受講生を主体に鳥取の美術&文化をリサーチし、編集会議を経て、『芸術と文化 鳥取2021』を執筆することを目指すという内容で、そしてもうひとつが、ゲスト講師による現代美術のレクチャー(美術批評、アートメディア、リサーチ、キュレーションといったテーマ)という内容です。参加者も、目的や関心に応じて、リサーチ&執筆に取り組む「受講生」、リサーチ&執筆をしないものの講座を通じて参加する「聴講生」、ゲスト講師による現代美術のレクチャー回のみに参加する「ゲストレクチャー枠」の3区分に分かれました。

「第1回」のガイダンスでは、講座の内容や目的、日程、受講形態、運営体制などを講師の筒井が紹介しました。この講座はZOOMによるオンライン実施ではありますが、「Scrapbox」というドキュメント管理ツールを導入することで、双方向的な取り組みを補完しました。受講生は「Scrapbox」で、それぞれの自己紹介や活動紹介、リサーチの過程を共有し、運営側の講師やアドバイザー、他の受講生、聴講生とコメントでやり取りをしながら、調査・執筆をすすめていきました。

講座の「Scrapbox」

「第2回」は、「鳥取美術&文化概略」と題した鳥取の近現代文化史のレクチャーを講師の筒井が行いました。「第3回」は、アドバイザーのきりとりめでるさん(編集者、デジタル写真研究)と紺野優希さん(批評家)によるレクチャーを実施しました。きりとりさんは「ヴァナキュラー写真論」、紺野さんは「韓国の現代美術探訪」についてそれぞれトークを行いました。地域の美術や文化を語るための方法論、また現場の各スポットを回ることの重要さについて、それぞれのトークを通じて語られました。また、受講生はそれぞれの調査テーマを紹介しました。「第6回」の編集会議①では、受講生が「Scrapbox」や「パワーポイント」を使用して、それぞれの調査内容について発表しました。それに対して、ゲストコメンテーターの山本浩貴さん(文化研究、美術家)を中心にコメントを行いました。原稿締切後に開かれた「第10回」の編集会議②では、受講生それぞれがリサーチの成果について紹介し、『芸術と文化 鳥取2021』の刊行に向けて編集プロセスを共有しました。

また、ゲスト講師によるレクチャーは、「第4回」成相肇さん(学芸員)「砂のような大衆」、「第5回」中ザワヒデキさん(美術家)「フロッピー・アート・マガジン『JAPAN ART TODAY』の全貌」、「第7回」アンドリュー・マークルさん(ARTiTインターナショナル版副編集長)「歴史を捉えなおすメディアの役割」、「第8回」小田原のどか(彫刻家、彫刻研究者、版元運営)「つくること、書くこと:土地との関わりから考える」、「第9回」吉竹美香(インディペンデントキュレーター)「キュレーターとしての役割・展開」の5回実施されました。詳細は紺野優希さんのレポートをご参照ください。

この講座は、コロナ禍のため急遽オンライン実施となりましたが、結果として、アメリカ在住の吉竹美香さんによるレクチャーが実現し、また、受講生の3分の1が鳥取県外在住の方々であったことなど、可能性が広がった面もありました。そして2021年3月には、いよいよ講座の成果物である『芸術と文化 鳥取2021』の刊行です。村瀬謙介さんが2020年11月に立ち上げられた鳥取の出版社「小取舎」からの出版となります。ぜひみなさまに読んでいただけたらうれしく思います。

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[実践活動編B] 鳥取の美術&文化リサーチ講座 / 講座各回レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/archives/news/b_report_konno/ Thu, 25 Feb 2021 21:30:40 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2020/?post_type=news&p=5630

『JAT』について語る中ザワヒデキさん

第1回(10/15)

「鳥取の美術&文化リサーチ講座2020」のアウトラインについて紹介。ゲスト講師を迎える回では、幅広い意味でリサーチや編集に携わる方々がトークを受けもつ事に。現場での微視的な観察力も求められるが、一方で、ワイドな考え方や捉え方をしながらアプローチしていく方法の、二つのパターンを磨いていける講座構成になっている。

第2回(10/29)

この回では筒井宏樹先生による鳥取美術についての紹介が行われた。もちろん舞台は鳥取になるわけだが、より重要なのは日本の近現代史と結びつけ、その一点にとり収めることなく、いかに対照し周辺と関係付けながら、定説や歴史を書き換えることが可能であるか、模索することにある。例えば、土方稲嶺の作品を追うことで、彼の生涯だけでなく、後期江戸画壇の系譜を鳥取(当時の因幡)地域から辿ることも可能である。そうすることで、山陰が「裏日本」としてどのように表象されるかだけでなく、その表象がどのような根拠によって支えられているか、改めて考えることに繋がった。

第3回(11/12)

アドバイザーによる自己紹介。私紺野優希は、韓国のここ数年のアートシーンを画像メインで紹介。きりとりさんはヴァナキュラー写真についての紹介。両者共に批評家というスタンスに収まりきらない活動をしていて、きりとりさんの場合は「写真」というメディア/メディウムを扱うことに、その色が強く出ていると思えた。無意識の内に残され、また今日ではスマートフォンなどで誰もが写真を撮れるようになった時代に、写真とは、そして仮に芸術の一ジャンルを占めるのであれば「芸術写真」とは、どのように位置づけられるのか。このような問題意識は、「韓国の美術」を国民性や民度という言葉を介さないで伝えるかという課題と共鳴しているように思えた。

第4回(11/26)

成相肇さんによる、批評家の石子順造と花田清輝の紹介。美術手帖の劇画特集や記録芸術の会などの事例を挙げながら説明を聞くことで、両者の批評観が垣間見れた。何を批評するかという問いに対して、両者は共に考察対象になりえないものを、論議として展開しているように思えた。劇画や歌声運動などに注目することによって、彼らのアプローチは、既成論壇に向けた批評的な態度として働き、それまで捉えきれなかった事象を分析することに繋がった。

第5回(12/3)

中ザワヒデキさんによるJapan Art Today(以下JAT)の紹介。当時記録されたフロッピーディスクのコンテンツを見ながら、JATの活動について聞いた。中村政人が中心人物となって、当時路上で行われた活動も、しっかりと記録に残されている。一種のアートメディアということもあって、写真記録だけでなく、文章も残されている。全体的にしっかりとした構成がとられている点では、今日のメディアやネットワークサービスとは異なっている。私自身も編集活動をしていることもあって、コンテンツは量と構成力が問われると、共感できた。

第6回(12/10)

山本浩貴さんを迎えての講評。今回はオンライン講座ということもあり、鳥取に在住している人だけでなく、移住予定の人や、鳥取に以前訪れたことのある人、など、様々な受講生が集まった。発表を聞きながら膨大すぎるテーマがなく、それぞれのテーマに沿って綿密にアプローチしているのが素晴らしかった。個人的には表象問題(白井権八・絵葉書)を扱ったテーマが興味深かったが、ほかの発表もみな個人の経験や疑問をもとに展開されている点が、とても自然でよかった。

第7回(12/18)

アートを伝達するメディアの活動について、アンドリュー・マークルさん自らの体験をもとに紹介。Art Asia PacificやArt itにかけて、幅広くメディアが多様化していく中で、アジアの現代アートが注目されはじめた時期についても言及。2000年代、アジアのアートを西洋に紹介する過程では、オリエンタリズムに直面しているようにも思えた。その上で、改めて(幅広い意味の)メディアの役割を考えてみた時に、現地の声をいかに伝えるかが重要なポイントになってくるだろう。その点で、ARTFORUMで高田冬彦さんを紹介したり、あいちトリエンナーレと表現の不自由展の動向などをいち早く伝えたマークルさんの活動は、メディアの方向性を考える上でヒントになるだろう。

第8回(1/7)

彫刻像の意味変容について、小田原のどかさんの経験談をもとに聞くことができた。過去を記す=標すことから、何かを治癒するものに意味が変わってきた原爆爆心地に置かれた像について触れながら、彫刻と表象の問題意識を述べてくれた。これは表現される対象の意味についても当てはまる。愛の象徴に母子像をモチーフにするといった行為をはじめ、何かを表すことについて、何かを代表したり一般化することの危うさについて、考えさせられた。この問題は彫刻だけに限らず、芸術一般も同様に、今後考えてゆく必要があるだろう。

第9回(1/10)

吉竹美香さんの活動を具体的に振り返りながら紹介。もの派や村上隆をアメリカ紹介したように、他国で日本の美術を紹介することの難しさややりがいが伝わってきた。たとえば「ワンダーフェスティバル」の説明をどう位置づけて紹介するか、図録掲載やリサーチ過程で扱う文章を理解して翻訳する、といった一連の伝達の仕方。また、美術館とインディペンデントな活動を比較しながらやりやすさとやりづらさを、経験談を交えながら語ってくれた。縛りが強くなってしまうのは、日本や韓国とも変わらないと思った反面、2012年のダグ・エイケンのプロジェクションのように、美術館が社会に切り込めるスリットとして機能している点で、日本とは役割が少し違うように考えさせられた。

第10回(1/28)

受講生によるリサーチ発表。前回(第6回)とくらべて、リサーチのテーマがスタイリッシュになった。前回指摘した内容が、結果的に受講生の発表や文章で簡潔にまとめられて、情報量を抑えつつも本題として凝縮された印象を覚えた。

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