プログラムPROGRAM

おととからだであそぼう
〜即興音楽とダンスのワークショップ

特別講座『野口体操について知ろう』
わらべ館ワークショップ開催レポート

2020.12.25

テキスト:きのさいこ、田中悦子、荻野ちよ / 写真:わらべ館スタッフ
講師:新井英夫
サポートスタッフ:田中悦子 荻野ちよ 森本みち子 高橋智美
参加人数:23名

前日11月27日に鳥取大学アートプラザで開催された野口体操について学ぶ勉強会は大人向けだったのですが、今回はわらべ館で親子連れが多く、未就学児も多く含まれることから内容も大きく異なるものとなりました。今回は普段ファシリテーターとしてこのワークショップを進行している田中悦子さん、荻野ちよさんにファシリテーターの視点から新井さんのワークショップを見て学んだり、感じたりしたことをレポートしてもらいました。

 

事前の打ち合わせ(12:30−)

呼び名をどうするか。新井さんはWSの様子によって、呼び方も考えるとのこと。
今回はフレンドリー系で、ということで新井さんは「あらぴー」に。

始まる前 (13:15-)

場に紙風船を転がしておく→何かがあると、参加者が場になじみやすいという新井さんの助言
入場した参加者から紙風船で遊ぶ。新井さんもふくめ、スタッフ講師陣も荷物置き場を案内しつつ、いっしょに遊ぶ。紙風船で遊ぶうちに、少しずつ緊張感がほぐれていくのがわかる。紙風船は、つぶれていても吹いて膨らまさない。軽くポンポンとパスするうちにだんだん膨らんでくる。興味を引く現象だし、感染防止の観点からもよい方法。慣れてきたところで「紙風船しりとり」が始まる。しりとりしながら次の人へパス。頭使いつつ体を動かすので、見ていても高度と感じた。

始まり(13:37-)

高橋さんから、あいさつと肖像権等の必要事項の確認があり、ところで、今日の講師は・・・・?さっきまでここにいたのにねえ。といいつつ、まず田中さんが「あらぴー!」と呼んでみる。反応なし、皆で呼んでみようか、ということになり、せーので「あらぴー!」と呼ぶ。1回では登場せず、3回呼んでしばらくしたら、怪しい?音が聞こえ、赤い筒布に入った新井さんが現れる。顔は見えない状態。その恰好のまま、あちこちの参加者に近づき、タッチ(布の上から)するなどのコミュニケーションをした後、布を脱ぐ。すぐには顔を見せず、興味を引き付けておいてから顔を表す。でも、声が出ない。声のスイッチがある、というパフォーマンス(スイッチを使って、声を出したり消したり、英語になったり)ののち、話し出す。登場から出囃子のような音とも合っていて、コミカルだった。

歩いて止まる (13:46-)

スタッフによるデモンストレーション→参加者によるデモンストレーション→全員でやる
歩き方がどんどん楽しくなってくる。それに伴い、止まる時のポーズもどんどん難しかったり面白くなったりする。

新聞紙 (13:57-)

新聞紙になって動く。「三つ数えたらあなたは新聞紙になりまーす。1,2,3!」。新井さんが動かす新聞紙を見ながら、新聞になったつもりで動く。1枚の新聞を縦に持ち、少しだけ傾けたり回転したり、くしゃくしゃ折り曲げたり。
スタッフによるデモンストレーション
→参加者によるデモンストレーション(新聞になる、新聞を動かす)
→全員でやる 一人が舞台に立って新聞を操作し、他のみんながそれに合わせて動く
二人組だったり3人組だったり。ほとんどの親子が一緒にしてた。
最初に呪文の言葉をかけることで、子どもたちはより楽しくその気になって動けていたのではと思う。

ギリギリポーズ(13:14-)

長い毛糸を新井さんとスタッフが持ってピンっとはり、それを跳び越えたりくぐったり。
長い毛糸に触れないギリギリのところでポーズして止まる。
二人組:Aが好きなポーズで立つ。Bがたっている人の身体じゅう、いかにギリギリ触れないかを考えたポーズで止まる。AはBに触れないように抜け出して、今度は自分がBにギリギリ触れないポーズで止まる。この繰り返し。
参加者の様子を見て3人組や4人組でもOK。4人組の場合は、二人がポーズ、二人がギリギリポーズを作り、4人で一つのオブジェになるように交代しながら続ける。
ずっと親子で組んでいる参加者には、サポートスタッフをそのグループに入れるなど、新たな刺激が加わるような配慮を新井さんはしていた。
参加者を半分に分け、鑑賞し合う。
4歳くらい?の女の子は何をやっているのかは理解できてなかった様子(少し難しかったかも)だけど、終始笑顔で楽しんでいた

お祓い(14:29-)

参加者は中央あたりに集まって座る。 養生シート(7m×7m)の端を二人でもち、参加者の上を行ったり来たり。
参加者はあおむけに寝ころぶ。新井さん含めスタッフ4人でシートの4つの角をもち、参加者の上にピンと張る。シートを持った4人はなるべく高いところにシートを保ちながら、揺らして波を作る。最後はせーので持ち上げ、新井さん以外が同時に手を離した瞬間に、新井さんがシートをひっぱって、ステージ袖のカーテンの中に回収。
その回収がとても見事で、一瞬にして海の中の夢から現実に戻ってくる魔法のようだった。

終わった後

参加者の何人かは会場に残り、大きな筒のドラムたたいたり、そのほかの楽器も使って森本さんと即興で音楽を奏でたりして遊んでいた。
また、WS中はなかなか参加できなかったけど、やりたい気持ちがだんだん醸成され、終わったころにその気になり、終わってからのこの楽器遊びでその気持ちを満足させていた参加者もいた。

新井さんは会場出口の外で、笛を吹きながら皆を送った。

振り返りでの話

冒頭の「あらぴー!」と呼ぶことは、3回は呼んでもらうつもりだった、とのこと。また、新井さんは皆で呼んでもらうつもりだったのを理解していなくて、始めはひとりで呼んだ。そのあとは、皆で呼んでみようという流れになったので、結局新井さんの予定していた始まり方になったが、打ち合わせ時に、もう少しちゃんと確認しておくべきだった。

非日常と日常の壁をなくす

はじめと終わりの工夫。はじめは場に物を置くことでなじみやすく。終わりは、なにかしら余韻の残る終わり方を。日常に返ってからも、ふとこのWSでのことを思い出し、今その思い出した日常の時と、楽しく遊んだWSの時間とがつながっていると思えるように。

ステージにずっといてみんなの中で活動に参加できなかった子について

そういう形で自分を主張しているので、排除したり、無理に仲間に入れたりはしなかった。かといって全く声をかけないわけでなく、そこにいること、じぶんなりに参加してることを認めるようにしていた。

デモンストレーションについて

スタッフでやった後、参加者にしてもらう。その時にはまず子供に声をかけた。その子がしてくれない場合、その親にお願いしたり、大人を助けてという伝え方でやってもらったり。どうしてもいやそうな子には無理強いはしない。参加した子供の一人がとても協力的で、ぼくがやるんだ、という使命感のようなもの、または役立ち感を感じてデモンストレーションをやってくれていた。彼が新聞を動かす役をした時は、ゆっくりやさしく、とても繊細にうごかしていた。

今回の「ギリギリポーズ」もちょっと密な感があり危ういけど、ちょっとした触れ合い(触らなくても)のような「密な時間」というのはこのシリーズを通して生み出していけたのではないでしょうか。新井さんの日常/非日常の話もそうですが、あの時夢中になったよねとか、お母さん必死だったねとか、何かしら家族の思い出にもなってくれたら最高ですね。

 

ワークショップの内容自体はこれまで自分たちでも取り上げた内容に近いものもあるのですが、出だしから様々な工夫がなされており、声かけの仕方や周囲への目配りなどにさすがと感じました。前日の勉強会でも様々なものを用いながらわかりやすく丁寧に惜しげもなく「見せて」いく。原理を踏まえた上で自由に動く時間をとっていました。そこからは各自が自分の身体で広げていけばいい、その案内役のような方でした。これまでの長い経験や知識が随所にあらわれており、良き学びの時間だったと思います。
新井さん、ありがとうございました。

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