プログラムPROGRAM

おととからだであそぼう
〜即興音楽とダンスのワークショップ

11月開催レポート

2020.11.18

テキスト:きのさいこ / 写真:わらべ館スタッフ、蔵多優美
2020.11.08 わらべ館いべんとほーる
進行役:荻野ちよ、田中悦子、松浦秀一郎、中村友紀(鳥取大学4年)
照明デザイン、オペレーション:田中万智(鳥取大学2年)、藤森このみ(鳥取大学4年)
舞台設営:中村友紀(鳥取大学4年)、酒井鞠乃(鳥取大学4年)
音楽:森本みち子(パーカッション)、tomo.(電子マリンバなど),高橋智美(わらべ館)
記録・サポート:蔵多優美(鳥取大学地域学部附属芸術文化センターアートマネジメント講座事務局)、わらべ館
参加者:19名(通常の親子連れだけではなく大学生なども含まれる、スタッフ・関係者は別)

10月に開催されたワークショップを踏まえ、もう少し深められないかということで鳥取メンバーでの再トライアルを行った。事前に学生たちとのミーティング、ウェブでの大人たちも含めてのミーティングを行い、今回のワークショップは作成されている。
今回は1年間(文化庁事業としては3年間)のまとめとして開催された。

照明などの仕込み、準備のため9時より鳥取大学有志4名で準備を行った。

① 導入

「これから海に冒険に出かけるよ」というところからお話をします。荻野さんが中心となり、困ったり迷子になったらついて来てねと進行役の自己紹介からスタート。その後前回の「困った時のグルグル回し」を教え、準備運動を行いました。(注1)

② まずは浅い海からスタート

さあ、実際に海に入ってみましょうということで、照明を変化させていきます。カニやエビなど浅瀬にいる動物の模写を中心に動きを生み出していきました。ちなみにですがここで飛ばし過ぎ、あとで「普通の魚が出てこなかった」というコメントも出ました。

③ 少しずつ深い海に行きますよ

深い海に行くから、みんなついて来てねとゆっくり巡回。途中激しい波が起こるとみんなで回ることになったり。その間にだんだん暗くなっていきます。

クラゲのような水銀灯(すずらんテープや布を使用してカバーにかこうしました)。が降りて来て、一気に不思議な空間になっていきます。
そんな中深い海では今まで見なかったような不思議なお魚が登場します。(注2)
「あ!ダイオウイカ!!」と言いながらみんなが連なり、エサを追いかけたりも。またサンゴに出会いそこの中をくぐったり。(実際のサンゴはそこまで深くにはいないのですが、、、)
誰からか「チンアナゴ!」という声が聞こえ皆がチンアナゴになる不思議な瞬間も。ダンサーがチンアナゴさんに小魚になって遊びに伺いました。

④ 深海

不思議な卵が転がって来ます。
100円均一で販売されているつり用の発光物質で、事前打ち合わせではチョウチンアンコウのように頭につけられないかなど模索していました。そのままでは小さな子供たちの場合誤飲の可能性もあり、危険だろうと思われたのですが、蛍光色の風船の中に入れ、すずらんテープを取り付けることで深海生物のような不思議な感触を生み出しました。
暗くなっていくことでますます幻想的な雰囲気に。(注3)


その後、トーンチャイムをダンサーたちが手分けしてもち、空間全体から音楽が聞こえてくるような音に囲まれているように工夫してみました。森本さんによると#の音階を使用すると不安感が出るということであえて黒鍵を中心としたセレクションを行いました。ダンサーたちは低めの音階で、またさし音として高い音を森本さんに担当していただきバランスを取りました。

⑤ そろそろ戻りますよー

キラキラと光る照明が差し込み(注4)、上を見上げながら真ん中に寄っていきました。それをみながら寝転がってみると、「そろそろ戻らなきゃね」という声が。
排煙口が開き、自然の光が入って来ます。プカプカ浮かびながら元の世界に帰ってくることができました。

 

実際のパフォーマンスの時間は40分程度ではあったものの、盛り沢山の内容であった。わらべ館で使用しているナトリウムライト(通常水銀灯と呼ばれている)や現在の照明機材は2021年2月にLEDへの入れ替えの予定となっているが、水銀灯のクラゲや、海の色合いなど、前回までのトライアルを生かし、それを最大限活用する内容となった。環境をあまりに設定しすぎると様々な動きを生み出すには制限が増えてしまう。しかし照明などの変化のおかげでイメージが広がり、特に大人には薄暗くなることで恥ずかしがる暇もなく動いてしまう、そんな場を作ることができたと思う。
先月のブルーシートの含め、このような舞台設定は子供たちではなく大人たちが巻き込まれるための仕組みなのかもしれないとも感じた。
今回は三浦さん(前回の照明デザイン)がいなかったこともあり、学生チームが頑張った。様々なアイデアを出し、実際に行ってみながら、このワークショップは作られており、さながら一つの舞台を作っているかのようであった。
「こんなのできるかなー」「こうしたらいいんじゃない?」そんな緩やかな対話から作品は生まれてくる。面白かった、楽しかった、それがレパートリーとなり、この場所でしかできないものとなっていく、そんなことも含め、良き学びの会になったと感じている。
また、今回特に自発的に生まれてくるものの価値について考えさせられた。学生も、大人もこうなったらいいなと思う気持ちは変わらない。一緒に考えてみる、やってみて、また考える。やってみないで諦めるのではなく、そういうことが実は大事なことなのではないだろうか。ワークショップは工房という意味を持つ。教えてもらって作るのではなく、やってみたいことを試す場でもある。照明の明るさを変えてみたり、クラゲの足に触手をつけてみようとしてみたりという自発的な試みが生まれてくるところが良いのではないだろうか。そのような場所を持つことができていることは幸せなことだと思う。
次回は新井英夫さんのワークショップ。前日に行われる野口体操講座と合わせ、ぜひ県内の皆さんに身体について考える機会となって欲しいと思っている。

  • 注1)始まる際に「ちよフィッシュ!」「しゅーフィッシュ!」などの自己紹介を行うことで認識してもらうことができました。
  • 注2)各進行役が特徴的な動きを行いながら誘導していきました。浅い海のカニについては小さなサワガニのようなイメージで素早く動いたり、大きなズワイガニのように足を様々に動かしたり。ちょうどカニ漁の解禁の時期でした。
    深い海の生物についてはプロジェクターで写真等を投影することも考え、実験してみました。床や壁(わらべ館は円形なので歪みます)に投影して動かすなど。しかし、絵を見てしまい、動きが止まってしまうことから、言葉かけやダンサーたちの動きで引き出すこととしました。なお、深海生物の住んでいる深さはサンゴなどよりもはるかに深いので、サンゴの部分は正しくは間違いになります。
  • 注3)照明については舞台裏にある調光システムと横からのフレネルライトの転がし1台(大学からの持ち込み)を使用しています。光量を上げ下げすることで、真っ暗なままだと不安になってしまいますが、光が差し込むように感じ、子供たちも楽しんでいました。また、側面からの転がしが1台あることで、壁面にクラゲの影が浮かび上がり、より幻想的な雰囲気になっていました。(なお、海が深くなるにつれて徐々にクラゲはいなくなります)
  • 注4)横からの転がしの角度を変え、水の入ったボールに光を当てそのリフレクション(反射)を天井に映し出しました。小さな波ですが、その変化がわかるように深海をより暗めに設定しています。これは照明研究会の時にも行っており、波を扇風機で起こしたり、ミラーシート(激しく出したりする時には有効です)で行ったりもしましたが、結局一番早いのは直接手でボールをゆすることでした。シンプルが一番です。

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