プログラムPROGRAM

ことばの再発明
−鳥取で「つくる」人のためのセルフマネジメント講座−

オリエンテーションを終えて

2020.08.04

テキスト・イラスト:蔵多優美

『ことばの再発明−鳥取で「つくる」人のためのセルフマネジメント講座−』というタイトルが決まったのは、約2ヶ月半前のこと。当初は『芸術作品を語る「言葉」を生み出すための講座』としていた。根本は変わっていないが、この講座を改めて問い直し、伝えたいキーワードを含めたタイトルを生み出すことにした。“車輪の再発明”という言葉をもじり、さらに“鳥取で「つくる」人”、“セルフマネジメント”という言葉を副題として入れる。『ことばの再発明』はそこから始まっていたのかもしれない。

この講座は、対面での座学及び実践的なワークショップを予定していたが、コロナ禍という状況を踏まえ、「オンラインでの実施/成果発表展は鳥取のギャラリーで開催」という講座構成とした。日々状況が変化する中で講師を県内外からお招きすることも、受講生が集まり数時間の座学やワークショップを実施する状況を生み出すことも難しい。なので、「オンラインでの実施」という環境の中、何をどう実施すれば、受講生にとって価値のある講座となるのか、「ことばの再発明」となるのかを共同企画者である佐々木さんと考えた。そうして生み出されたものが「対話」の時間だ。

この講座では、そんな「もやもや」こそを大切にします。表現とことばの間にある齟齬や矛盾を避けて通るのではなく、真正面から向き合って、納得がいくまで考えることは、作家にとってとても重要な時間だと思うからです。

この講座の講師たちは、それぞれ複数の領域を横断して活動し、異なる分野や異なる立場の人にも伝わる言葉を模索してきた方々です。便宜上「講師」としていますが、一方的に教わる/学ぶのではなく、受講者と問題や悩みを共有し、一緒に悩み、一緒に考える役割を担っていただきます。

また、自分の作品や活動について踏み込んだ話ができるように、講師1人につき受講者2人という、少人数での対話の時間を設けました。

専門学校や大学の卒業後、あるいは所属団体をもたない場合など、作品について語ったり情報交換ができる機会をもつことは簡単ではありません。

この講座がそんな機会の一つになればと思っています。

受講希望者・講座に関心がある方向けの情報共有資料」より

上記をコンセプト文として盛り込み、講師に講座参加の依頼をし、受講生へ情報発信を行った。結果、私と佐々木さんを含めた12名の講師と鳥取で「つくる」18名の受講生が集まった。鳥取県外からも申込があったが、“鳥取で「つくる」人”とタイトルにも含めたように、当初から鳥取在住の方を受講者と想定していたので、オンライン開講になっても方針は変えないことにした。「対話」の時間は受講生(鳥取県在住者)のみとし、「講演」については“聴講生”という枠を設け、鳥取県内問わず受け入れ可能とした。今日までに20数名の参加申込がある。企画側としては、想定外の人数が集まり、日々驚いている。

さて、集まった“鳥取で「つくる」人”とは、どのような人達だろう。絵画表現や音楽活動をするアーティストやデザイナー、パフォーマー、ライター、編集者、企画者、映像クリエイター、音声ガイド制作、学生、助産師、医師…など。“ことば”という切り口の下、プロアマを問わない多種多様な受講生が集まった。先日、オリエンテーションを行い、受講生の1人が「講師の顔ぶれはもちろんですが、受講生の皆さんが持っているフィールドの多彩さ。それを知ることが楽しみです。」と自己紹介内でコメントしてくださった。まさにその通りだ。コロナ禍の中、新しいコミュニティが生まれることは容易いことではない。けれども、『ことばの再発明』から新たな繋がりや鳥取での新しいプロジェクトが生まれるように感じている。オリエンテーションに集った受講生の顔ぶれを見て、妄想が確信めいたものに変わった。まだ何も始まっていないのに、とてもワクワクする時間となった。

オリエンテーション内で「受講生の目標」を共有した。

受講生の目標

  • ❶ 普段なかなか話す機会のない、制作や活動についての悩み事や迷い事を語り、共有する時間を得る。
  • ❷ 自分の作品や活動が他者にどのように受け取られるのかを知る(魅力的に映るところや不十分に映るところ、分かりづらいところ等)。
  • ❸ 上記を踏まえて、自分自身の作品や活動を説明したり、アピールする「ことば」を組み立て直したり、より洗練させていく(具体的には、ステイトメントやプロフィール、プレゼン原稿、ポートフォリオ等)。

この3つの目標を掲げ、これらの取り組みの暫定的な「成果発表」を行う。この講座は、今年度から新しく始まったプロジェクトで、前例が無く、日々手探りで進めている。実践の場は実験の場だ。企画側にとっても、講師・受講生にとっても、チャレンジングなプロジェクトだろう。多種多様な鳥取で「つくる」人による成果発表展という名のグループ展はいったいどんなものになるのか。9月末のGallery そらは、どのような空間になっているだろうか。今からとても楽しみだ。ご興味のある方は、ぜひ現地で私達のプロジェクトの成果を観ていただきたい。そして状況が許せば新しい生活様式の中で語り合えることを。

プログラムトップへ