プログラムPROGRAM

鳥取の美術&文化リサーチ講座
「現代美術を学び、鳥取美術&文化を調べる」

『芸術と文化 鳥取2021』(小取舎)刊行までの講座の軌跡

2021.02.26

テキスト:筒井宏樹

『芸術と文化 鳥取2021』(小取舎、2021年3月)

「鳥取の美術&文化リサーチ講座」は、主に2つの柱から成り立つ講座です。ひとつは、受講生を主体に鳥取の美術&文化をリサーチし、編集会議を経て、『芸術と文化 鳥取2021』を執筆することを目指すという内容で、そしてもうひとつが、ゲスト講師による現代美術のレクチャー(美術批評、アートメディア、リサーチ、キュレーションといったテーマ)という内容です。参加者も、目的や関心に応じて、リサーチ&執筆に取り組む「受講生」、リサーチ&執筆をしないものの講座を通じて参加する「聴講生」、ゲスト講師による現代美術のレクチャー回のみに参加する「ゲストレクチャー枠」の3区分に分かれました。

「第1回」のガイダンスでは、講座の内容や目的、日程、受講形態、運営体制などを講師の筒井が紹介しました。この講座はZOOMによるオンライン実施ではありますが、「Scrapbox」というドキュメント管理ツールを導入することで、双方向的な取り組みを補完しました。受講生は「Scrapbox」で、それぞれの自己紹介や活動紹介、リサーチの過程を共有し、運営側の講師やアドバイザー、他の受講生、聴講生とコメントでやり取りをしながら、調査・執筆をすすめていきました。

講座の「Scrapbox」

「第2回」は、「鳥取美術&文化概略」と題した鳥取の近現代文化史のレクチャーを講師の筒井が行いました。「第3回」は、アドバイザーのきりとりめでるさん(編集者、デジタル写真研究)と紺野優希さん(批評家)によるレクチャーを実施しました。きりとりさんは「ヴァナキュラー写真論」、紺野さんは「韓国の現代美術探訪」についてそれぞれトークを行いました。地域の美術や文化を語るための方法論、また現場の各スポットを回ることの重要さについて、それぞれのトークを通じて語られました。また、受講生はそれぞれの調査テーマを紹介しました。「第6回」の編集会議①では、受講生が「Scrapbox」や「パワーポイント」を使用して、それぞれの調査内容について発表しました。それに対して、ゲストコメンテーターの山本浩貴さん(文化研究、美術家)を中心にコメントを行いました。原稿締切後に開かれた「第10回」の編集会議②では、受講生それぞれがリサーチの成果について紹介し、『芸術と文化 鳥取2021』の刊行に向けて編集プロセスを共有しました。

また、ゲスト講師によるレクチャーは、「第4回」成相肇さん(学芸員)「砂のような大衆」、「第5回」中ザワヒデキさん(美術家)「フロッピー・アート・マガジン『JAPAN ART TODAY』の全貌」、「第7回」アンドリュー・マークルさん(ARTiTインターナショナル版副編集長)「歴史を捉えなおすメディアの役割」、「第8回」小田原のどか(彫刻家、彫刻研究者、版元運営)「つくること、書くこと:土地との関わりから考える」、「第9回」吉竹美香(インディペンデントキュレーター)「キュレーターとしての役割・展開」の5回実施されました。詳細は紺野優希さんのレポートをご参照ください。

この講座は、コロナ禍のため急遽オンライン実施となりましたが、結果として、アメリカ在住の吉竹美香さんによるレクチャーが実現し、また、受講生の3分の1が鳥取県外在住の方々であったことなど、可能性が広がった面もありました。そして2021年3月には、いよいよ講座の成果物である『芸術と文化 鳥取2021』の刊行です。村瀬謙介さんが2020年11月に立ち上げられた鳥取の出版社「小取舎」からの出版となります。ぜひみなさまに読んでいただけたらうれしく思います。

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