プログラムPROGRAM

地域の記憶を記録するためのメディアを探るプロジェクト

にんげん研究会 定例ゼミ
「いつかのなにかのわたしの日記」開催レポート

2021.03.19

テキスト・佐々木友輔/イラスト・今林由佳/映像・蛇谷りえ、金川晋吾、今林由佳

鳥取大学から松崎までおおよそ50分ほどかけて移動し、そこにある複合滞在スペース「たみ」で定例ゼミを行う。にんげん研究会はこの「手間」を大切にしてきた。大学ではない場所に集まり、学生だけでなく地域の人々とも関わりながら、密なコミュニケーションを重ねることに意義を見出していた。

しかし今年度はコロナ禍により、同様の実施形態を続けることができなくなり、期せずしてZOOMを用いたオンライン実施となった。当初は「身近な人物へのインタビュー」を行い、それを映像メディアなどで記録・発信する方法と思想を実践的に学ぶ予定であったが、「人に会いに行く」ことが困難になった状況を踏まえて、「いつかのなにかのわたしの日記」と題した新たなテーマを考案。人に会えない状況自体や、その中でも出会うことができた人や物について「日記」形式で記述し、毎月1回報告し合う場を設けた。

コーディネーターの蛇谷りえ氏と、ゲストリポーターの金川晋吾氏、今林由佳氏が、受講生の報告やその他の発言を拾い、感想や質問を投げかけ、それに対してまた受講生が返答する。このプロセスを繰り返すことで、オンライン形式だからこそ際立つ「記憶」や「記録」のあり方に気づいたり、反対に、対面形式では問題にならなかったことがオンラインでは非常に困難なコミュニケーションの問題として立ちはだかることに気づくなど、例年とは異なる様々な発見があった。また10月以降は、これまでに発表された「日記」を振り返る時間を設け、個々人のテキストや発言について可能なかぎり手厚く検討するように心がけた。

このように、オンライン実施という初めての試みに伴う様々な困難やトラブルに直面しながらも、その都度、教員とコーディネーター、ゲストリポーター間で議論し、受講生の意見も反映しながらトライ&エラーを繰り返していった。結果的に、「メディア」「記憶」「記録」、そして「コミュニケーション」に対する考え方を根本的に見直し、それぞれの複雑に絡み合った関係性を解きほぐして理解を深める機会になったと思う。

その試行錯誤の過程も含め、本年度の定例ゼミの活動内容は、蛇谷りえ氏、金川晋吾氏、今林由佳氏にそれぞれの視点から制作していただいた事業報告映像に記録されている。定例ゼミの配信映像・音声を主な素材としつつも、あえて映像を排して音声のみを残したり、アニメーションを導入するなど、この映像自体が「地域の記憶を記録するためのメディアを探る」取り組みの一つの実践として見ることができる。「にんげん研究会」への参加経験がある方にもない方にも、ぜひご覧いただきたい。

事業報告映像(蛇谷りえ)

事業報告映像(金川晋吾)

事業報告映像(今林由佳)

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