地域学研究会大会

2021年 地域学研究会大会

 地域学研究会第11回大会「地域課題と知のクロス 地域の当事者とは誰か─当事者研究と地域学─」と題し、2021年11月27日(土)にオンラインで開催いたしました。コロナ禍において、経済的・精神的な“生きづらさ”を抱えた時に、自分が自分の困り事について研究し、そのプロセスや結果を地域の広がりの中で共有することが支えになり得るのではないかと考え、設定したテーマです。

向谷地生良氏による基調講演

 基調講演には、向谷地生良氏(社会福祉法人浦河べてるの家理事)をお迎えし、当事者研究やオープンダイアローグが、べてるの家においていかに実践されてきたかを、「三度の飯よりミーティング」「安心してサボれる会社づくり」等のキーワードを用いて語っていただきました。一方で、幻聴などに由来する犯罪行為によって、司法精神科病棟や刑務所に滞在する方々における当事者研究の必要性にも言及されました。また当日は、べてるの家から2名の方がZOOMでご参加くださり、「幻聴さん」との向き合い方や、お子さんが発揮する研究力について、貴重なエピソードを聞かせていただきました。

植田俊幸氏によるパネルディスカッション

 午後からの「パネルディスカッションⅠ」では、植田俊幸氏(鳥取県立厚生病院・精神保健福祉センター医師)に、精神科医療の歴史と実情についてお話いただいた後、田中大介准教授から、べてるの実験の再現性や、認知行動療法と当事者研究の関係性について問題提起がなされ、向谷地氏を交えて議論が交わされました。





 「パネルディスカッションⅡ」では、丸祐一教授の司会のもと、様々なフィールドで他者との関係性を構築しつつ研究を展開されてきた呉永鎬准教授、稲津秀樹准教授、菰田レエ也講師が、非対称な人間関係における対話・応答の不可能性や、当事者による「当事者化」の拒否といった、綺麗事が意味をなさない現実に根差した問題を提起され、向谷地氏よりコメントをいただきました。

 ポスターセッションは、政策・教育・文化にまたがる13のテーマに基づく研究成果を、動画やPDFファイルで視聴・閲覧していただく形で行いました。

 本大会の参加者は、約60名でした。ご参加いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。

なお、大会の記録は、次年度に刊行される『地域学論集』(地域学部紀要・鳥取大学附属図書館リポジトリでネット公開)に掲載の予定です。

2019年 地域学研究会大会

 地域学研究会第10回大会「地域課題と知のクロス:地域をえがくー想像力としての地域学」を鳥取大学地域学部5160教室において2019年11月24日(土)に開催しました。はじめに、開会にあたって、山根学部長、中島学長につづいて鳥取県の広瀬龍一地域づくり推進部部長にご挨拶いただき、続いて大会の趣旨説明を行いました。普段私たちが目にしている地域の景色は、過去の様々な営みの積み重ねの上に成り立っており、その痕跡は現在まで残された建物や町並み、絵図や写真、人々の記憶や記録の中に断片として残っています。その断片の受け止め方(意識の仕方)によって、地域は様々な見え方をします。それぞれの景色を共有し、ともにより良い未来の姿をえがいていくために必要なものは何かという考えのもと、本大会のテーマを「地域をえがくー想像力としての地域学」と設定しました。

 まず、柴崎友香さんによる基調講演「小説で街をえがく」では、小説を書くにあたって参考にしてきた資料を用いながら、過去にその場所であった出来事と今の生活とのつながりや街についての人々の記憶、思い出、そこでの生活へのまなざしなど、街をえがく際の柴崎さんならではの考え方やとらえ方についてお話しいただきました。

 そして、午後のシンポジウム・総括セッションでは、「私と街のできごとをえがく-身近で小さな変化から」をテーマとして、まず、蛇谷りえさん(合同会社うかぶLLC)と福田修三さん(株式会社インテリアフクタ)には、それぞれの経験を通した町や生活の移り変わりについてお話しいただきました。そのあと、佐藤紘一さん(鳥取県立図書館)、佐々木孝文さん(鳥取市教育委員会)からは、それぞれ文学作品、写真、地図などを資料として、過去の鳥取の姿や生活の様子についてコメントをいただきました。それらをまとめる総括セッションでは、補足説明やフロアとのやり取りを通じて、更に理解が深められました。

 また、地域連携研究員の報告や教員、学生の地域活動なども含め、ポスターセッションでも14件の報告がありました。

 第10回大会の参加者は172名でした。

 なお、地域学研究会大会の内容は、例年原稿化して、次年度の地域学論集(地域学部紀要・鳥取大図書館リボジトリでネット公開)の巻頭に報告として掲載されます。

2018年 地域学研究会大会

 地域学研究会第9回大会「地域課題と知のクロス:「私」と「地域学」」を鳥取大学地域学部5160教室において2018年11月24日(土)に開催しました。はじめに、開会にあたって、藤井学部長、法橋理事につづいて鳥取県の池上祥子文化振興監兼文化振興課長にご挨拶いただき、続いて大会の趣旨説明を行いました。本大会のテーマである「私」と「地域学」は、私たち一人ひとりが自分の足元から暮らしをみつめ、より豊かに地域で暮らしていくために考え実践していく、そのような思いが集まれば、地域を支えていく力になるという考えのもとに設定されました。そのような思いを持ち、地域で実践されている方々を講師、パネリストとしてお招きしました。

 まず、内山節氏による基調講演「ここに生きるーいのちの場所を求めてー」では、群馬県上野村での暮らしやフランスなど国内外の事例を引き合いに出しながら、現代社会の問題点をあぶりだし、生きていくために大切なことは何か、古くからある伝統的な考え方や方法のなかにもそういうものがあるということが示されました。

 そして、午後のパネル発表・総括セッションでは、地域で起こっている身近で小さな変化に着目し、ゆりかご保育園園長の藤田安一氏、株式会社鳥プロCEOの福井恒美氏、本学部教員・学生からなる豊岡市への地域フィールド演習参加グループに、それぞれの取り組みを始めたいきさつや活動への思い、地域への思いについて語られました。そのあとの総括セッションでは、補足説明やフロアとのやり取りを通じて、更に理解が深められました。

 また、地域連携研究員の報告や教員、学生の地域活動なども含め、ポスターセッションでも15件の報告がありました。 第9回大会の参加者は150名でした。

 なお、地域学研究会大会の内容は、例年原稿化して、次年度の地域学論集(地域学部紀要・鳥取大図書館リボジトリでネット公開)の巻頭に報告として掲載されます。

2017年 地域学研究会大会

 地域学研究会第8回大会「地域課題と知のクロス~地域で生きる場をつくる~」をとりぎん文化会館において2017年11月25日(土)に開催しました。

 最初に、藤井地域学部長、法橋理事に続いて、鳥取県の高橋地域振興部長にご挨拶いただきました。その後、大会の趣旨説明があり、今回は大会のあり方を一新させ、「学生とともにつくる地域学」をめざして企画・運営に学生も参画し、若いエネルギーを注いでくれた旨の報告がありました。

 森まゆみ氏による基調講演「地域雑誌『谷根千』とその後」では、地域雑誌づくりを通して、歴史的視点をふまえた人々の生活や関係性構築の重要性、共に生きる場の形成プロセスが具体的に示されました。

 午後は、「地域で生きる場をつくる」実践(知)に関わる学生企画による2つの分科会を開催。「一拠点居住vs二拠点居住」分科会では、学生の進行のもと、一拠点居住者として寺岡昌一氏((株)てらおか農園経営)、二拠点居住者として古田琢也氏(八頭町の隼ラボでも事業展開する株式会社トリクミ経営,鳥取と東京に複数の仕事を持って活動)に、「What'sワークライフバランス」分科会では、ワークライフバランスの制度や仕組みの視点から鈴木直子氏(鳥取県中小企業労働相談所みなくる)、先進的な事例として谷口美也子氏(鳥取大学医学部附属病院ワークライフバランスセンター)に登壇いただき、活動に至る経緯、活動成果とその要因、課題と解決の方向性の観点から、報告および討議を行い、多様なアプローチや活動成果を左右する要因等、それぞれの課題について議論を深めました。

 その後の総括セッションは、学生を含む分科会進行者及び分科会アンケートに基づく話題提供者にも登壇してもらい、実践知から「地域で生きる場をつくる」基盤的な要素やそれらの構造についてまとめを行いました。

 また、ポスターセッションでは、17件の報告がありました。なお、大会参加者は、172名でした。

2016年 地域学研究会大会

 地域学研究会大会第7回大会「地域課題と知のクロス:地域で「息づく」地域学へ向けて」をとりぎん文化会館において2016年11月26日(土)に開催し、会場一杯の220名を超える参加者にお越しいただきました。藤井学部長、法橋理事につづいて鳥取県の岡崎隆司地域振興部長にご挨拶をいただき、つづいて改組によって次年度から再出発する「地域学部」の方向性ならびに大会の趣旨説明を行いました。本大会のテーマである≪地域で「息づく」地域学へ向けて≫は、地域の「智」と大学の「知」を重ね合わせ、互いに読み解き、新たな知と実践を生み出そうとするものであり、地域学という学問が大学の壁を越えて、地域の人々によってそれぞれの生活に取り込まれ、課題解決に向かうことをめざしたものです。

 平田オリザ氏による基調講演「文化政策で人口減少を止める」では、「身体的文化資本」という言葉で、子ども達が「本物」の文化(伝統文化も含め)などに触れて育つことによって大きくなってからの多様な「のびしろ」が獲得できること、また、その支えともなる「関心共同体」という関心にそった緩やかなコミュニティ、新たなコミュニケーションの場を地域で構築する必要性などが説かれました。

 そして午後の分科会・総括セッションでは、コミュニティでの生活が維持できるよう、子どもからお年寄りまでの多世代共通の土台の探求やネットワークの構築、また東京への漠然としたあこがれでなく、明確な目的を持って「本物」(伝統を含む文化や食を含むものづくり等)に出会える世界に直接つながることで、地方が東京一極集中から逃れる可能性などの議論が展開されました。また、地域連携研究員の報告や学生の地域活動なども含め、ポスターセッションでも20件の報告がありました。

 なお、地域学研究会大会の内容は、例年原稿化して、次年度の地域学論集(地域学部紀要・鳥取大図書館リボジトリでネット公開)の巻頭に報告として掲載されています。

2015年 地域学研究会大会

 地域学研究会大会第6回大会「地域課題と知のクロス 地域再生の手法—地域と世界をつないで—」を、2015年11月28日(土)鳥取大学において開催しました。グローバル化した現代において持続可能な地域をつくるためには、国内のローカルな視点にとどまらず、地域の国際比較、海外との地域間交流など、地域を巡るネットワークも重要な要素となります。この認識の上に立ち、本大会では、地域の教育へのグローカル戦略・地域ベースの国際交流・地域課題解決に向けた国際比較・地域企業の国際戦略などの面から実績ある実践者や専門家を迎え、パネルディスカッションを行い、グローバリゼーションの下での持続可能な地域を作るための取り組みや、そのために求められる人材像などについて、議論を深めました。

 大会ではまず、隠岐国学習センター長・豊田庄吾氏、タイム(とっとり国際交流連絡会)会長・ケイツ佳寿子氏、山陰海岸ジオパーク学識専門員・兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科助教・松原典孝氏、株式会社バルコス代表取締役・山本敬氏の4名を迎え、それぞれにパネル発表報告が行われました。

 続いて、上記報告に基づくパネルディスカッションを行いました。フロアも含めた活発なディスカッションが行われることで、グローバリゼーションの下での持続可能な地域を作るための取り組みや、そのために求められる人材像などについて討論され、多様なアプローチやそれぞれの課題について議論が深まりました。

 ポスターセッションでは、海外フィールド演習など地域学部における海外の地域に関する取り組みについて発表が行われ、15題目のエントリーがありました。参加者からの質問に応じてやりとりがなされ、さまざまな研究成果や社会実践が報告されました。

 大会参加者は130名でした。

2014年 地域学研究会大会

 地域学研究会大会第5回大会「地域課題と知のクロス—地域における大学の役割と地域の人材育成—」を、2014年11月29日(土)鳥取大学において開催しました。地域学部が10年を迎え、その成果と課題を踏まえさらにレベルアップしていくため、地域における大学の役割と人材育成に焦点をあて、本学部教員のみならず、地域の人材育成に関して積極的な活動を展開している研究者やNPOスタッフが参加し、意見を交わすことで、地域の人材育成システムの構築に向けて大学が果たし得る役割について議論を深めました。

 大会ではまず、科学技術の社会的実装というコンセプトをもとに、地域における人材育成もサポートされてきた有本建男氏(政策研究大学院大学・科学技術振興機構研究開発戦略センター 副センター長)による「大転換期の下での地域における大学の役割」と題した講演を聞き、今の時代に求められている大学の役割について基本的なビジョンを理解し、共有することができました。

 続いて、「地域の人材育成システムの構築に向けて」と題したパネルディスカッションを行いました。パネリストとして有本氏の他に、各方面から地域を支える新しい人材育成を、空き家活用・コミュニティや企業・むらづくりというテーマで、社会人・若者・学生を対象に展開されている徳田光弘氏(九州工業大学)・伊藤淳司氏(NPO法人ETIC.)・中塚雅也氏(神戸大学)の3名、それにアートによるまちづくりを学生と実践してきた地域学部の野田邦弘教授に話題提供してもらい、フロアも含めた活発なディスカッションが行われることで、人材育成の多様なアプローチやそれぞれの課題について議論を深めました。

 ポスター発表では、「地域学部10年のあゆみ」として地域学部の取り組みを紹介した他、「地域連携研究員の活動」に4題目、「鳥取大学地域再生プロジェクト」(文部科学省特別経費事業)に29題目のエントリーがあり、地域に根ざしたさまざまな研究成果や社会実践が報告されました。

 大会参加者は182名でした。

2013年 地域学研究会大会

 2013年11月30日、「地域課題と知のクロス~地域再生のための教育・研究の拠点形成」と題し、第4回大会を開催しました。地域が抱える少子高齢化や過疎化、都市と地方の経済格差など多様化・複雑化した課題に直面している地域の現状を反映して、学部教員や学生、地域連携研究員に加え、行政や企業、NPO、各種団体等で課題解決に取り組む人々が多数参加しました。

 今年の大会では、地域学部が中心に進めている「鳥取大学地域再生プロジェクト」の土台【協働のプラットフォーム構築】となりうるネットワークづくりを推し進め、大学の果たす役割、地域再生のための教育・研究の拠点としての大学の可能性について議論しました。

 まず日本総合研究所調査部主席研究員 藻谷浩介氏を迎え「地域課題解決のための大学が果たす役割-地域で求められる人材育成-」をテーマに講演をいただきました。ついで午後の分科会やポスターセッションでは地域学部教員や地域連携研究員がすすめている研究事例や社会実践を紹介しました。分科会では、自治体職員や地域の課題解決に取り組む人々をコメンテーターとして迎え議論を深め、地域学の新たな知の創造と地域実践の可能性に取り組むことができました。参加者は約170名でした。

2012年 地域学研究会大会

 11月17日、鳥取大学地域学部では「地域課題と知のクロス」と題し、地域が抱える少子高齢化や過疎化、都市と地方の経済格差など多様化・複雑化した課題に直面している地域の現状を踏まえて、学部教員や学生、地域連携研究員、行政や企業、NPO等で、課題解決に取り組む人々(地域のキーパーソン<216名>の参加)による、地域学研究会大会を開催しました。

 今年で3回目となる今回の大会では、地域課題の研究と解決に向けた大学によるアプローチと行政のアプローチを対比し、そのアプローチの特徴を互いに認識し合うとともに、地域課題解決に向けた共通の土台【協働のプラットフォーム構築】となりうるネットワークづくりへの取り組みとして、鳥取県平井知事を迎え「鳥取県から未来づくり~人と地域を基軸として~」をテーマに、鳥取県が抱える地域の課題について講演を頂き、また、鳥取県職員をコメンテーターとして迎え、地域学部教員や地域連携研究員が行っている研究事例社会実践について紹介されました。

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