無駄安留記隊

楓 亭(もみじてい)



   「紅葉御殿ト云。萩モ多株植之。小亭雅趣アリ。
       見る人におのが錦を奪はれし 昔やいかにかへるでの色」   『無駄安留記 拾遺巻』より



『無駄安留記』の絵によると、宝隆院庭園裏の階段を上ったところに楓亭がある。文中の小亭はこれにあたる。現在は荒地になってしまっていて、建物の跡も見当たらなかった(右写真)。県内の代表的な地誌には、扇御殿を取り上げているものはあったが、楓亭に関する記述は発見できなかった。その点において、楓亭を取り上げている『無駄安留記』は特異だといえるであろう。絵中の御殿とは扇御殿と考えられる。扇御殿は、第十一代藩主池田慶栄の未亡人宝隆院の御殿として、文久3(1863)5月起工された。明治維新後、明治4(1871)年に御殿の大半は取り壊され、現在は庭園と宝扇庵(元の御殿内化粧の間)のみが残されている。