学部長あいさつ

地域学部長 研究科長 岸本 覚

 新型コロナウイルス感染拡大がもたらした影響は計り知れないものです。政治・経済・社会・国際環境のみならず、個々人の働き方や教育・生活のあり方など今までの有り様をことごとく塗り替えています。感染拡大が収まっても簡単に元に戻ることは難しいでしょう。私たちはこの「生きづらい」情況の克服に向けて様々なことを考えていかなくてはなりません。

 地域学部は2017年度に1学科3コース(地域創造、人間形成、国際地域文化)に改組されて、地域の諸課題により学際的、総合的にアプローチできるようになりました。「地域」という概念は歴史的には極めて新しいものです。戦前には「郷土」「故郷」が主流でしたが、戦後は「地方」、現在は「地域」がよく用いられるようになりました。「地域」は中央に対する「地方」という意味ではありません。地域学部の「地域学」は人々が生活している空間の広がりとそこでの社会関係を「地域」と捉えて、検討すべき課題にあわせて「地域」のスケールを大小様々に変えながら、多様な分野の人々と協働して「一人ひとりが生きやすい」情況の実現に寄与することを目的にしています。

 現在、私たちを取り巻く環境は、少子高齢化、過疎化、グローバル化が急速に進むなかで、防災、医療・福祉・子育て、産業・観光・文化振興、教育、環境問題など多岐にわたる課題を抱えています。これらの課題は、一人の研究者や一つの分野だけで解決できるものではありません。政府・自治体あるいはそれを超えた様々な組織との連携が必要なことは言うまでもないでしょう。

 コロナ禍にともなう新たなステージの中で深刻化していく諸課題にいかに向き合っていくのか、生活をどのようにつくっていくのかが、今、問われています。そのため、これから地域や社会を担っていく学生の皆さんの課題解決への探究心と課題解決に参画し生活をつくっていく社会的実践力が求められているのです。本学部での学びは、自然系も含んだ人文社会系の「アカデミックな知」が中心となりますが、「地域で育まれてきた実践的な知」もとても重視しています。地域学部は理論的に追究するものと実践を通じて探究するものとの絶えざる循環を通して社会的な実践力をもった人材の育成を目指しているのです。

Top