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教員リレーエッセイ

Vol.18 田中大介「畑の中に貝がいる!?」

 近所の方のご好意で畑を借りて、野菜作りをしている。来るべき日に備え、生活力を高めるためのトレーニングの一環である。今は11月末まで収穫できていたプチトマトも枯れて、ダイコンをとりつつ、白菜やホウレンソウ、タマネギの成長を見守る時期である。無農薬をモットーにがんばっているのだが、想像以上に大変だ。何しろ12月を過ぎたというのに冬眠もせず、呑気に葉っぱを食べる害虫がいるのである。ゆるせん。そんな害虫の中で、特にひどいのが長さ3センチくらいの巻貝である。ちょっと油断すると、白菜が丸坊主になる。ちょうどカワニナのような貝なのであるが、なにせ畑の中。はじめみた時は、何らかの理由で捨てられた海の貝殻なのかと思っていた。しかし、よく見ると生きているし、ばりばり白菜を食っている。うーむ、ルール違反なほどよく食っているぞ、いったいこいつは何者なのだろうと思って調べてみた。
 するとこいつは「キセルガイ」という巻貝であることがわかった。陸生の貝類でカタツムリやナメクジと同じ仲間なのだとか。日本全国に200種類ほど“普通に”いるらしい。見た目には気持ち悪いのだが、地域によっては信仰の対象としてお守りになっていたり、肝臓の薬として使われていたりする、ということも知った。
 私は幼い頃、虫や動物が大好きで、虫取りやザリガニとりを熱心にしていた。小学校の卒業文集には「学者になりたい」と書いた。もちろん心理学なんかではなく、魚類学者になりたかったのである。そんな生き物好きな自負のある私が、日本に普通に存在している「キセルガイ」を知らなかった、という事実に、密かに、しかしおおいに恥じ入った。どうして40年も生きていて気がつかなかったのだろう、恥ずかしい。
 しかし、私が小さい頃に読んでいた図鑑には「キセルガイ」は紹介されていなかったように記憶しているし、教科書にもでていなかった。今、こどもたちが眺めている自然観察ハンドブックにもやっぱりキセルガイはでていない。こういうところに、キセルガイを見落とし続けた理由があるのかな、とも思った。
 そういえば、小学校を回ってみても、キセルガイの生態を調べた自由研究にお目にかかったことがない。私も学校や出版社が用意してくれた資料をもとに、自然観察していたのだとすると、なんだか本末転倒だったなあと思えてしまう。「畑、貝」の二語で、1秒以下のスピードで「キセルガイ」にたどり着かせてくれる現代のテクノロジーに感謝しつつ、いったい我々は何をみているのだろうか、何から学んでいるのだろうか、ということを改めて問いなおしてみたい。

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