プログラムPROGRAM

おととからだであそぼう
〜即興音楽とダンスのワークショップ

10月開催レポート

2020.10.30

テキスト:きのさいこ / 写真:高橋智美
2020.10.18 わらべ館いべんとほーる
照明デザイン:三浦あさ子
音楽構成:森本みち子
ストーリー構成:三浦あさ子、きのさいこ
進行役:荻野ちよ 、きのさいこ
参加者:10名(定員20名のところキャンセルが2件出たため)

9月に開催された照明研究会での実験を踏まえ、宇宙船に乗って様々な国に探検に出かけるというストーリー性のある体験型ワークを考案した。将来的にわらべ館の空間を活用したレパートリーのようにもなりうると考えている。
照明などの仕込み、準備のため10時より準備を開始した。

① 導入

「これから宇宙船に乗って探検に出かけるよ」というところからお話し、宇宙船の名前を決めることからスタート。「鳥取砂丘号」に決定。

② 困ったときのグルグル回し

これからの冒険に備えて、迷子になっちゃったり、怖かったり困った時にはどうしよう?と疑問を投げかけると荻野さんより「困った時には足首を回す」との声が上がり、「もっと困った時には手首も回す」「もっともっと困った時には頭も、お尻も、全身で回る」と合図の出し方を練習する。それがそのまま準備運動となりました。

③ ハッチが閉まるとさあ出発だ!いきなり真っ暗闇!!

わらべ館の天井部の排煙口をギギギとしめると、あたりは一面真っ暗に。みんな、誰かにつかまって!懐中電灯1つの灯だけでみんなで探検に出かけます。ゆっくりそろそろ途中で不思議な動きをする未確認生物を発見!

④ 森の国

ピピピと鳥の声が聞こえてきて明るくなるとそこは森の中でした。ブラケットと呼ばれる既存の壁あて照明にカラーフィルターを仕込むことで森の木が生えている様子を表現。その下に竹や木の楽器を持った音楽チームがいて、木の精を演じながらあちこちから話しかけてきます。その音に反応して動いてみたり、いろんな木の形になってみたり、時には動物さんも登場。

⑤ 海の国

大きなブルーシートが広がり、一面は一気に海辺に変化、小さな波から大きな波へこの海の中にもみんなで潜ってみよう。天井から光が差し込み海辺のキラキラした感じを味わいます。子供たちは大興奮。
波の音を中心に、ブルーシートのザワザワ感を最後に残すようにしてみました。

⑥ 機械の国

波がなくなったと思いきや今度は脚立を操る機械の国の女王様(荻野さん)が登場。天井に備え付けのナトリウムライトがカバーごと降りてきて、2階裏方用の窓に設置したパーライトを動かしながら当てると不思議な影と近未来都市のような景観に変化。ここにいる人はみんな機械のようにカキコキ動かねばなりません。音楽でも金属の音を中心にリズムをはっきり打ち出すことで動きを作りやすくしてみます。

⑦ お化け(?)の登場→困った時は??

カキコキ音がだんだん少なくなっていって、薄暗くなったところで巨大な影(木野)が登場。機械の女王様に襲いかかってきます。「助けて!」女王様の声に子供たちはどうしようとなりながらあまりの怖さにびっくりしてしまい、ステージ上に上がって動けなくなってしまいます。(今回の参加した子どもたちの年齢層が3、4歳の子が多く、小学生の集団が入ってくるとニュアンスは変わるだろうと感じています。)音楽もトーンチャイムをあえて不協和音になるように使用し不安感を煽ります。「困った時はグルグル回し!」みんなで腕回しをしている様子を見てお化けは退散して行きました。退散する時にはノコギリソーの音を出し、お化けの「やられた〜」感を表現してみました。

⑧ お化けさんはいなくなって光になって飛んでいくよ

トーンチャイムの高い音とともに綺麗な光が一個ずつ灯っていきます。先程のお化けさんは成仏できたらしい。蛍の光のようにも見えるこの明かりは携帯電話の懐中電灯機能。これに舞台照明用のカラーフィルターを小さく切って貼り付けてみました。空間に広がる光の点滅。またその光に当たることで様々な影が生まれ夢のような世界になっていきます。

⑨ 宇宙を飛び越えてわらべ館へ戻ろう!

最後に一面の星空を乗り越えてみんなで戻ってきます。懐中電灯にザルをかぶせたら広がる星空。グルグル回すとタイムワープしちゃいます。
戻ってきたらハッチが空いて、いつものわらべ館いべんとほーるの明るい照明になってほっと一安心。無事帰ってくることができました。

 

わらべ館で使用しているナトリウムライト(通常水銀灯と呼ばれている)や現在の照明機材は2021年2月にLEDへの入れ替えの予定となっている。現在あるものを生かしていくという試みでもあった。今回は大学から持ち込んだ影を出すための照明と2階に仕込んだサーチライト的に使用した照明は舞台用の照明だが、それ以外はわらべ館にあるものあるいは携帯電話の懐中電灯機能のレベルであり、家庭などでも十分応用が可能である。照明効果があることで瞬時に移動したり、想像力を広げるのに役立つことができることが確認できた。
今回は午前中にほぼ全ての仕込み、段取り、音楽編成等を行っており、リハーサルなどを行う予定が全くなかったこと、もっと各シーンでそれぞれ内容を膨らませられたのではないかということが、メンバーの心残りで、次回11月8日には三浦さんはくることができないが、今回の結果を踏まえて、学生チームで照明のアイデアを出しながら、照明であそぶリベンジを実施することになった。
音楽も動きも即興要素を含むものの、音楽は使用する楽器やイメージなどを作り、決めていく時間が必要で、正直あと2時間くらい欲しいところだったと思う。次回は今回の編成をベースにして作ることができるので、表現者として参入する余裕を持てるのではないだろうか。
このような体験型公演は今後増えていくだろうと考えており、五感全てを使って楽しむ、遊ぶ、そのようなところから豊かな感性の発達につながっていくのではないかと感じている。大人も子どもも一緒になって楽しめる、そんな場作りのためのトライアルとなった。自由度を保ちつつ飽きないためには発展のパターンをいくつか用意しておく必要がある。それにより子どもたちの様子を見て変化させたり、時間の様子で伸ばしたりということが可能になるだろう。そのあたりが次回に向けての課題になると考えている。

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