プログラムPROGRAM

09-1: 地域の記憶を記録する−メディア編

特別講座開催レポート(佐々木)

09-1: 地域の記憶を記録する−メディア編 特別講座開催レポート(佐々木)

2020.03.24

テキスト:佐々木友輔 / 写真:蛇谷りえ

鳥取大学にんげん研究会(通称「にんけん」)が企画・運営する「地域と文化のためのメディアを考える連続講座」の四年目は、「メディアをつかって、目に見えないものを、拡張する。」をテーマとして、三名の講師にお話を伺った。初回は12月4日(水)、tampen.jp編集長の田中大裕さんによる「短編アニメーション・ワールドの探索地図」。第二回は1月29日(水)、グレイスヴィルまいづる施設長の淡路由紀子さんによる「豊かな対話による、ケアの現場づくり」。第三回は2月12日(水)、NPO法人スウィング理事長の木ノ戸昌幸さんによる「身体で考え、社会へ飛び出す活動体」。本連続講座シリーズの伝統ともいいうる、一見ばらばらな、多様な分野で活躍する講師陣である。

あえて各自に共通する要素を見出すとするならば、それは自分自身を一つのメディア(媒介)として捉え、活用していく姿勢だろう。彼らは「○○とは何か」「○○はこうあらねばならない」式の限定に向かう思考ではなく、「××も○○である」「××が○○であるならば」式の拡張に向かう思考をもって活動しているように見受けられる。あらかじめ不動の理想や目標を掲げて突き進むのではなく、実際に出会った人や物、起きた出来事を受け取ることを出発点として、そこから何ができるか考えること。それぞれの長所や短所、独自性や普遍性を解釈し、適材適所に配置し、変換し、つなげていく役割を担うこと。「現場」の知や「経験」の知を重視しつつも、それが却って自分や他人の未来を狭めてしまう結果にならないように、常に自分自身の振る舞いを点検し、あらゆる可能性に向けて開かれた状態であるための努力を惜しまないこと。付け加えておけば、本講座のコーディネーターである蛇谷りえさんもまた、まさにこうした「メディアとしての人間」を実践する人物であり、共通した問題意識をもつ講師が集うことは半ば必然であったといえるだろう。

また今年の講座で強く印象に残っているのは、質疑応答の場面である。一般参加者の方々の質問はどれも具体的かつ切実で、講師もまた、ひとつひとつの問いに真摯に向き合い、公の場では語りづらい話題にまで踏み込んでくださることも少なくなかった。講座に関わった者たちがみな受け身にならず、能動的・積極的に場に関わることによって、互いに学び合うことができる、豊かな時間が生まれていたように思う。

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