09-1: 地域の記憶を記録する−メディア編
7月定例ゼミレポート(今林)
09-1: 地域の記憶を記録する−メディア編 7/18開催レポート(今林)
2020.03.24
「人に話を聞いて何かを作る」。
つまり「作品」を作るわけで、みなさんはアーティストである。
もしそのことがピンとこないなら・・・と思って、メモを書きました。
しっかり悩んで欲しいし、迷走した時に、何か役にたったら幸いです。
人に「話を聞かせてくれ」と頼むことは、自らがその他者を求めているという姿勢を、
露わにする行為で、人間愛の告白とも言える。
はたまた、プライバシーの侵入ともなり、勇気の要る行為であろう。
学生たちはそれぞれ、このような人物に対して、インタビューをしているようだった。
・自分にとって身近な人物
・興味のある人物
・目に止まった人物
インタビュー結果を報告する彼らは、その行為を成し遂げた誇りがあるのか、どこか嬉しそうだった。
仲間の発表に対し、意見も述べ合い、穏やかな活気がある。
お邪魔した研究会の開催場所は「たみ」。
まるで、そこを「自分の居場所」と感じることを許してくれるような、
愉快な居心地の良さがある処だった。
発表する彼らの爽やかさとやる気に反し、
どこか互いに、空回りを察するような、妙な空気があった。
そんな彼らを見ていて、私の抱いた懸念は、インタビューする相手の目に
「誰かにおつかいを頼まれたから、来た人間」として映っていないか、である。
人間愛の告白にもなりきれず、プライバシー侵入の覚悟もないように見えては、
あまりにも煮え切らない。
発表の場での妙な空気は、彼ら自身が、その課題を感じ取っている証しのように見えた。
(研究会においては、マイクは学生に向けられている。
「あなた自身が、どういうつもりで対峙し、何を掴むのか」
インタビューをし、記録化に取り組む過程、全土において、
このマイクは問い続けるだろう。)
彼らは、それぞれらしい経路を辿りながら、きっと何かを掴むに違いない。
次は、どのような顔をした彼らを拝せるのか、楽しみである。
今林由佳(いまばやし・ゆか)
1985年生まれ。アニメーション作家・絵本画家・イラストレーター。千葉県船橋市で育つ。東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業。同大学大学院映像研究科アニメーション専攻を修了。NHK “おかあさんといっしょ” にて『メダルあげます』、“みんなのうた” にて『ピヨの恩返し』などの子供向けの映像制作を担当する⼀⽅で、戦時、福祉、医療の領域でドキュメンタリーなどを基調とした映像を多く⼿がける。著書に、しかけ絵本『どうぶつぱっかーん!』シリーズ(わだことみ・作/東京書店)、『うれしいひのいただきまあす』(わだことみ・作/ハッピーオウル社)がある。