プログラムPROGRAM

07: 即興音楽とダンスのワークショップ

11月開催レポート

07: 即興音楽とダンスのワークショップ 11/16開催レポート

2019.11.21

テキスト:きのさいこ / 写真:蔵多優美

 

ファシリテーター:古川友紀
サポートスタッフ:高橋智美(わらべ館)、蔵多優美(鳥取大学)、きのさいこ
参加者:21名(うちファシリテーター講座受講者2名)

 

12:30
ファシリテーター集合、今日の内容について話す。古川さんより、前半は体をほぐすための運動と、ペアワーク、後半で照明を用いて影で遊ぶという2部構成の説明を受ける。照明については実際に影がどのように出るかをこの時点で確認、ドラムや置き位置を確認する。

13:00
ファシリテーター講座受講生も合わせて相談し、場づくりを行う。受付や、荷物を置けるよう机を並べる。楽器のセレクトを古川さんにお願いし、隠し場所を用意する。子どもたちは動き回りたいらしく、前回同様既に走り回っている。
今回照明を使用する関係からはじめより水銀燈を使わず少し薄暗い感じでの照明で行うことにする。

13:30
ワークショップスタート
ファシリテーターの自己紹介、注意事項の確認の後、ワークショップをスタートする。
今回の参加した親子連れは友人同士のようで親しそう。また大人の参加者も鳥取銀河鉄道祭関連ですでに知り合っていることから積極的に参加してくださる。
目の周りをほぐすところから簡単なストレッチを行い2人組のペアワークに入る。

体格差はあるもののはじめは親子など近くにいる人と組んでもらう。引っ張り合いっこ、背中合わせ、背中乗せのほか、背中合わせのまま横移動をし、他の組みと出会ったらメンバーチェンジを繰り返していく(これにより、いろんな人の背中に出会い、初対面の人でもすんなりと入ることができた)
身長の高い男性と小さい子供など工夫が必要なこともあり、参加者たちが様々な体制を取り始める。

その様子を話題として古川さんより「大人の身体と子供の身体ってあるよね。」とその違いを知るためのワークの提案がなされる。(注1)

1つ目は立っている大人を子供達がみんなで支えて寝かせてあげる、起こしてあげるというもの。
2つ目は大人たちが寝っ転がり列を作り、その上を子供たちが滑るように転がっていく「まぼろしの橋」のワーク。(みんなで空を飛んでみよう、橋を渡ろう)
はじめは子供たちもおっかなびっくりだったものの、だんだん積極的に参加するようになり、あっという間に30分が過ぎる。


14:00
一度水を飲んでもらうなどの小休止を挟み、再集合し、みんなで大きな円を作る。音楽は古川さん持参の曲でテルミンのような不思議な曲調なので、皆を待ちながらふわふわ漂う。
その後円のままゆっくり横に寝っ転がり、「おやすみなさい」部屋の明かりを消す。
子どもたちは休憩後だったせいか、動き始めてしまう。
「夜はどんな風に寝てるかなあ」など声かけは行うものの、暗い環境が楽しいのか静まらない。(注2)


照明のドラムとライトを用意し、「太陽は沈んでしまったけれど、お月様が出てきました」と点灯するとホール内に影が映し出され、子どもたちも驚いた様子。
わらべ館は円形のため影が大きく歪み、それもまた面白く、子どもたちがどんどん動き始めていく。
その後子供たちを一度集め、大人たちが動く時間を設定、お互いに影の動きを作る側と見る側の両方を体験しました。

その後2グループに分かれてポーズを作って集団で不思議な影の生き物を作るゲームを行い、発展させたあと、だんだん夜から朝になっていく言葉掛けで戻ってきました。
「おはようー」
暗いところから明るいところに出ると目が慣れるまでに時間がかかるから気をつけてね。という言葉掛けの後、今日のワークは終了となりました。(注3)


14:30
終了後ファシリテーター講座受講者とともに振り返りを行う。
講師の元々のやりたかったこと、今回できたこと、できなかったことを聞きながら、受講生、サポートアーティストらも意見を交わす。

注1:古川さんによれば「あえて大人/子供と属性分けることで場が活気づくこともあるのではないか。特に大人の参加者にとっては属性がある種のコンテキストとなって、むしろ自由になれる場合もあるのでは」とのこと。今回行わなかったが大人たちがトンネルなどの構造物を作るというアイデアもあった。また、これらの比較的入りやすい活動(そして人数が必要な活動)を行うことで、前回課題として上がっていた、離れて見ている親たちも巻き込みたいと考えあらかじめ設定していた内容でもある。(今回の参加者は大人も子供も皆全編参加していました)

注2:非常灯が点灯していることもあり、真っ暗な空間にはならず、子供たちのテンションは上がっていった。この小休止を入れるかどうかについては古川さんとも始める前に難しいと話していた。休憩があることで集中力が切れてしまうという例もあるが、「まぼろしの橋」ワークは大人たちに負担がかかったようなので水飲み休憩を入れることとした。

注3: 参加者より声が聞こえにくいというフィードバックはあったものの、全般的に細かなところへの配慮が様々に行われていました。このような気配りはぜひ見習いたいものと思います。

注4:終了後、もし後20−30分あったら、もう少し動きたかったですねという古川さんの声。不思議な空間を漂う経験をするワークとしては良かったものの、子供たちとしてはまだ動きたい様子を見ての提案。今回は音楽要素をほとんど使わないで進行したが、もし時間があれば夜明けから昼間の明るいなかでのエネルギッシュな即興(そして夕暮れまで)へと続けていってもよかったかも、とのこと。

 

振り返りののち古川さんより、自身が携わったり実施したりしているワークショップの事例を紹介していただきました。

1つは京都を拠点に活動するDance & Peopleのワークショップ。
「障害を持つアーティストがナビゲートするワークショップ」などを紹介していただきました。月一の定期ワークショップ「からだをつかってあそぼ」は、20年近く続いているそう。わらべ館のワークショップは性質上毎回異なる人が来る形になっていますが、このように同じメンバーで集まることでできるコミュニティもあります。そのメンバーに会うために遠くからでも通うということが起きていきます。
Dance&People
からだをつかってあそぼ

もう一つは自身がおこなっている散歩ワークショップ。
「即興散歩の会アルコテンポ」は集った参加者とともに、目的地を決めず気になる道をあちこち歩きつづけるというもの。散歩の後に地図をひろげて、歩いた道のりを皆で思い出しながら一本の線を完成させるというもの。
「おもいしワークショップ」は、神戸の街を歩きながら、街の記憶をたどるワークを行うというもの。事前にルートを定め、途中様々なワーク(阪神淡路大震災に関するテキストの朗読、石碑の文言の読み上げ、石を用いたワークや、身体ワークなど)を含んだ構成となっています。過去にはリサーチ協力に鳥大の教員も関わっていたとのこと。
おもいしワークショップ

「ファシリテーターとしてワークショップをする際、『自分のおもしろいと感じる感覚を、他者と共有するためにはどうしたらよいか』ということを考えています。独りよがりな感覚に閉じこまらないよう、どうしたらひらいていけるかな、と。そのために工夫したり想像を巡らしたりして準備しています。また一方、自分がワークショップに参加する場合は、そのファシリテーターのアイデアにまずは乗っかってみようという気概でいます。自分の考えとはちょっと違うな、というときも、取り敢えず騙されてみる(笑)という感じです。そうすることで意外な発見があるからです。」と話す古川さん。

古川さんはダンサーですが、ダンスに限らず身体を用いて暮らしや生きることを感じたり考えたりするためのワークショップであると思うのでした。
ワークショップは工房あるいは実験の場でもあります。
ファシリテーター養成講座の受講生の皆さんにもダンスに限らず様々な視点で自分なりのワークショップを組み立てていってもらえると嬉しく思います。

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