プログラムPROGRAM

04: 地域における芸術・文化事業の企画を考えよう

開催レポート

04: 地域における芸術・文化事業の企画を考えよう 開催レポート

2020.03.27

テキスト・写真:藤田和俊

この第4回と最終第5回の2回にわたって講師に来ていただいた有福さんは、ブランディングや地域づくり、メディアづくりなど、人を巻き込みながら企画を形にしていく仕事を企業や行政などと幅広くされている方だ。これまでの講座がどちらかと言えば「学ぶ」ことの比重が大きかったが、今回は最初からテーブルに模造紙が広げられて、有福さんが大枠で企画実践への道筋を作りながら、実際に受講者が考えて作っていく作業となった。いかに「自分ごと」として、地域課題と芸術文化を組み合わせて考えていけるか。今回はまず「企画を考える」というところまで受講者が考える回で、互いの意見に耳を傾けながら、試行錯誤の取り組みが始まった。

▽「未来思考」で実現していく

有福さんは「物事を考えていく際に、今現在から未来を見据える『フォアキャスティング』になりやすいが、実はその未来予測はほぼ当たらない」ため、思い描いた未来を実現するためには何をしていくべきかを考える『バックキャスティング』が必要という。また、未来に向けて多様な仲間同士が協力できる状況を作り出すために「対話」が大事だとして、早速、受講者同士が2人組となり「10年前想像していなかったけど、今起きていること」や「2030年に、どんなことが起きているか」というテーマでアイスブレイキングを行った。これにより、互いに語ることと未来志向で考えること、受講者のどちらのスイッチも押していっていた。

続いて、実際に企画を作る前に、参考になるよう有福さんの会社で手がけた事業が紹介された。25周年を迎えたJリーグの「未来共創」ではクラブが地域のために何ができるかを実践し、宮城県の鳴子温泉では「湯治」というテーマに絞って住民が次々にアイデアを出して参加していく実例を挙げた。これらを踏まえ、地域を巻き込む企画に必要な要素として、有福さんは①主催者も楽しむこと、②参加型で持続的であること、③世代を超えた理解を集めること、を挙げた。そして、「自分ごとで考えることが大切」と強調し、いよいよ受講者が本格的に企画を立てていくワークショップへと移った。

▽柔軟な意見交換


まず、「この地域(鳥取)には、どのような可能性があるだろうか?」というお題に対し、4人一組のグループ内で意見を出し合った。その際の視点は様々で、モノ、コト、ヒト、トコロ、カコ、ミライ、ワザ、シゴト、クウキなど幅広く考えていく。受講者からは、「海や星がきれい」「海と山が近い」(自然環境)、「カニや梨など美味しいものがたくさん」(食材)、「古民家をリノベーションしている人がいる」(近年の流れや人の存在)、など自由な発想で意見が出た。

ここから本題に入っていくのだが、「では、その可能性を生かして、どのような芸術・文化事業ができるか?」を個人個人で考え、アイデアの方向性が近い人を求めて会場内を移動した。2〜4人ほどのグループに再編されてから、グループで一つの企画を形にしていった。この日の最後には、配られたA3の紙を新聞紙に見立てて、自分たちの考えた事業が形となった時に新聞に取り上げられた紙面を書いていく作業を行った。例えば、地域の人のドキュメンタリーをまとめた映像制作▽鳥取砂丘での大音楽祭▽こどもが自然体験を通した作品制作▽鳥取コミックマーケットー、など自然を生かしたり、地域住民を巻き込んだアイデアが飛び出していた。

ここまでは、自由な発想から実際に芸術・文化事業に落とし込んでいく過程を作った。有福さんが「一回できる姿を可視化できましたか?ここが企画の第一歩です」と話したように、まだ企画を立てた段階で、それを実践に向けて進めていくために有福さんから講座初となる宿題が出された。

▽【宿題】以下についてまとめておくこと。

事業の目指す姿(なぜやるのか)▽事業のタイトル(聞いただけでイメージできるか)▽事業の概要(具体的にどのようなことをやるのか)▽実施メンバー(推進する人、支援する人、参加する人は)▽効果検証(何がどうなると成功なのか)

事業を達成していくために、抑えておかなければならないポイントを非常に簡潔にまとめて考えられる宿題であり、様々なことに転用できる宿題だと感じた。グループ内で共通したものをまとめた方が良いという有福さんの助言を受け、受講者らは互いに連絡を取り合いながら第5回までにこの宿題に取り掛かっていくことになった。過去の講座で知り、学んだことを生かしながら、この日の企画がどのようにブラッシュアップされていくか、楽しみである。

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