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00: 「地域を知り、地域で実践するアートマネジメント」とは?

オリエンテーション開催レポート

00: 「地域を知り、地域で実践するアートマネジメント」とは? 開催レポート

2019.10.01

テキスト・写真:藤田和俊

「地域の中のアートに、どんな種になるような宝が眠っているか。みなさんで悩みをシェアして活動につなげるコミュニティを作っていきましょう」。主催者代表の五島朋子教授(地域学部附属芸術文化センター長)の投げかけとともに、鳥取大学アートマネジメント講座の2年目が幕を開けた。鳥取大学コミュニティデザインラボ(CDL)で開かれた概論編オリエンテーションにはアートを使った地域課題の解決法を探す人など、老若男女、多種多様な職業や立場の35人が駆けつけた。

今、地域におけるアートの役割とは何かー。その答えを見つけるべく、今年の講座では、連続レクチャーからなる概論編6回、現場で学習する実践活動編は大学教授や芸術家らによる6部門を企画した。地域を見つめる多様な視点、そして実際にそれを生かした企画を運営する力を養うことが狙いで、初回のオリエンテーションの第1部では、実践活動編のそれぞれ主催者が活動を紹介した。即興音楽とダンスのワークショップ、地域を語り継ぐメディアの作り方、オフシアターのためのオペラ上演…。講師陣の熱のこもったプレゼンが続き、参加者は熱心に聞き入った。

続いて、第2部は、同大学で文化政策論を教える竹内潔准教授による講座が行われた。竹内准教授は「人口が減ることは避けられない。ここまで急激な勢いで人口が減る時代は今までない。その社会の中でアートがどう関わっていくかが大事です」と話し、過去に社会がアートに求めてきたことから現在、さらに今後求められることを指摘した。

近年、文化芸術基本法の改正など、アートが観光やまちづくりなどと連携を図って、一丸となって社会に貢献していくことが求められていると言います。アートを経済に波及させていく動きも増加している一方で、アートの本質的な価値を忘れてはならないという声も多い現実がある。「社会の側もアートを必要とし、使おうとしている動きがあります。本質的な価値を見失わずにニーズに応えていく必要があり、そのバランスが大事ですが、実は専門家もその答えを持っていない状況。だからこそ、こういう講座で皆さんと一緒に答えを見つけていきたいですし、思いを共有できたらと思います」と話した。

アートマネジメントの必要性の理解と実践につなげていくヒントを共有し、その後ワークショップを実施した。自己紹介も兼ねて「なぜこの講座に参加したのか」を語り、次々に、地域や社会の問題点が浮かび上がってきた。

鳥取市佐治町の総合支所の一部を管理しているという女性は、「かつては村の中心だった建物に興味を持ってもらいたいんです」と廃墟となった建物の写真を手に、アートを使った利用方法を模索していると訴え、130km離れた島根県松江市から参加した女性は公共施設の指定管理会社の社員で「美術を生涯学習で楽しんでもらいたいですが、どう要望に応えていくかわからなくて…」と悩みを語った。学校の教員、地域活動に熱心な高齢者、学びを得たい学生…。そこには年齢や立場を超えて、意見を交わす姿があった。

「鳥取を知りたい」

「地域にあるものを芸術的な価値に変えたい」

「特別支援学校の子供達が表現に関われるオペラができないか」

「地域で子供達にどうアートに接してもらうかを考えたい」

 

皆、アートの新たな可能性を信じ、そこに何かを期待する声ばかりで、アートの力で地域を変えようとしていた。ある参加者は「人口減少社会の中で文化や芸術がどうなっていくのか。いろんな考えがあり、それが留まっていないのも今。そのヒントを得たいと思ったし、想像したり、読んで学んだりするだけじゃ足りません。この講座なら実体験として得られると思い参加しました」と期待を込めた。

その意見はまさに、アートによる仕掛けを学び、それを実践につなげる講座の狙いそのものだ。その担い手を一人でも増やしていくべく、その種まきが始まった。

 

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