レポート – 地域を知り、地域で実践するアートマネジメント講座2019 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019 Fri, 27 Mar 2020 03:10:39 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.2.5 02: 高齢者による舞台芸術の可能性を探る 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/191031_01/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/191031_01/#respond Fri, 27 Mar 2020 09:52:45 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3543

ミラー氏は、地域社会にとって演劇がどのような価値を持つかを常に考えてきた。大学で演劇を学んだのち、スコットランドのダンディーにある劇場で仕事を始め、その後、様々な年齢・バックグラウンドの一般市民と演劇作品と作る経験をしてきた。

近年は、50歳以上の中高年とともに舞台作品を作るプロジェクト “The Flames”(炎)を、スコットランド各地で展開している。スコットランドの文化政策が、「平等、社会的包摂、多様性」を標榜していることもあり、活動には社会的な追い風が吹いているという。“The Flames”では、台詞や台本をあらかじめ用意することはなく、作品作りは質問から始まる。たとえば、「最後に踊ったのはいつですか?」とか、「人生におけるリスクとは何か?」というような。ミラー氏が想定もしないような驚くべき答えが返ってくることもあるという。

「ゲリラ・セッション」と呼ばれるThe Flames の作品作りはスピーディーだ。5日間のワークショップで、いくつかの質問に対する参加者の答えをもとにシーンを作り、そこに映像作家と音楽家が参加する。6日目に一つにまとめあげ、7日目に通し稽古、8日目にマチネとソワレの2回上演で終わる。こうして上演される50分ほどのパフォーマンスは、参加する中高年一人一人の人生や個性を反映するものとなる。

「高齢者」はイギリスでは、社会の中で「見えない存在」になってしまっているとミラー氏は指摘する。一方、老年期は、青少年期と同じような人生における大きな転換期であり、改めて自分を見つめ直す時期ではないか。「それゆえにこそ非常に興味深い演劇作品が生まれる」と語った。また、参加者はそれぞれの人生経験をもとに内面を表現するのだから、そこに正解不正解はない。「正解を考えてしまうと表現できない。だから本当に自分自身を解放することが、このような舞台づくりには重要だ」と。だからこそThe Flames の舞台は、観客にとって高齢者のイメージを大きく変える。ミラー氏の活動は、演劇を通して社会という輪を作り上げることにつながっているのではないだろうか。

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04: 地域における芸術・文化事業の企画を考えよう 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/191211_01/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/191211_01/#respond Fri, 27 Mar 2020 07:38:03 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3619 この第4回と最終第5回の2回にわたって講師に来ていただいた有福さんは、ブランディングや地域づくり、メディアづくりなど、人を巻き込みながら企画を形にしていく仕事を企業や行政などと幅広くされている方だ。これまでの講座がどちらかと言えば「学ぶ」ことの比重が大きかったが、今回は最初からテーブルに模造紙が広げられて、有福さんが大枠で企画実践への道筋を作りながら、実際に受講者が考えて作っていく作業となった。いかに「自分ごと」として、地域課題と芸術文化を組み合わせて考えていけるか。今回はまず「企画を考える」というところまで受講者が考える回で、互いの意見に耳を傾けながら、試行錯誤の取り組みが始まった。

▽「未来思考」で実現していく

有福さんは「物事を考えていく際に、今現在から未来を見据える『フォアキャスティング』になりやすいが、実はその未来予測はほぼ当たらない」ため、思い描いた未来を実現するためには何をしていくべきかを考える『バックキャスティング』が必要という。また、未来に向けて多様な仲間同士が協力できる状況を作り出すために「対話」が大事だとして、早速、受講者同士が2人組となり「10年前想像していなかったけど、今起きていること」や「2030年に、どんなことが起きているか」というテーマでアイスブレイキングを行った。これにより、互いに語ることと未来志向で考えること、受講者のどちらのスイッチも押していっていた。

続いて、実際に企画を作る前に、参考になるよう有福さんの会社で手がけた事業が紹介された。25周年を迎えたJリーグの「未来共創」ではクラブが地域のために何ができるかを実践し、宮城県の鳴子温泉では「湯治」というテーマに絞って住民が次々にアイデアを出して参加していく実例を挙げた。これらを踏まえ、地域を巻き込む企画に必要な要素として、有福さんは①主催者も楽しむこと、②参加型で持続的であること、③世代を超えた理解を集めること、を挙げた。そして、「自分ごとで考えることが大切」と強調し、いよいよ受講者が本格的に企画を立てていくワークショップへと移った。

▽柔軟な意見交換


まず、「この地域(鳥取)には、どのような可能性があるだろうか?」というお題に対し、4人一組のグループ内で意見を出し合った。その際の視点は様々で、モノ、コト、ヒト、トコロ、カコ、ミライ、ワザ、シゴト、クウキなど幅広く考えていく。受講者からは、「海や星がきれい」「海と山が近い」(自然環境)、「カニや梨など美味しいものがたくさん」(食材)、「古民家をリノベーションしている人がいる」(近年の流れや人の存在)、など自由な発想で意見が出た。

ここから本題に入っていくのだが、「では、その可能性を生かして、どのような芸術・文化事業ができるか?」を個人個人で考え、アイデアの方向性が近い人を求めて会場内を移動した。2〜4人ほどのグループに再編されてから、グループで一つの企画を形にしていった。この日の最後には、配られたA3の紙を新聞紙に見立てて、自分たちの考えた事業が形となった時に新聞に取り上げられた紙面を書いていく作業を行った。例えば、地域の人のドキュメンタリーをまとめた映像制作▽鳥取砂丘での大音楽祭▽こどもが自然体験を通した作品制作▽鳥取コミックマーケットー、など自然を生かしたり、地域住民を巻き込んだアイデアが飛び出していた。

ここまでは、自由な発想から実際に芸術・文化事業に落とし込んでいく過程を作った。有福さんが「一回できる姿を可視化できましたか?ここが企画の第一歩です」と話したように、まだ企画を立てた段階で、それを実践に向けて進めていくために有福さんから講座初となる宿題が出された。

▽【宿題】以下についてまとめておくこと。

事業の目指す姿(なぜやるのか)▽事業のタイトル(聞いただけでイメージできるか)▽事業の概要(具体的にどのようなことをやるのか)▽実施メンバー(推進する人、支援する人、参加する人は)▽効果検証(何がどうなると成功なのか)

事業を達成していくために、抑えておかなければならないポイントを非常に簡潔にまとめて考えられる宿題であり、様々なことに転用できる宿題だと感じた。グループ内で共通したものをまとめた方が良いという有福さんの助言を受け、受講者らは互いに連絡を取り合いながら第5回までにこの宿題に取り掛かっていくことになった。過去の講座で知り、学んだことを生かしながら、この日の企画がどのようにブラッシュアップされていくか、楽しみである。

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05: 地域における芸術・文化事業を評価しあおう 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/200115_01/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/200115_01/#respond Fri, 27 Mar 2020 06:05:59 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3638  概論編の最終回は、前回に引き続いて有福さんの講座だった。前回から、鳥取の地域色を生かした芸術・文化事業を3〜4人ずつのグループに分かれて企画を作り、さらに宿題で内容を詰めてもらった。この日は2時間にわたり、他のグループから評価や助言を受けながら、企画をまとめていった。有福さんは「議論ではなく、対話を大事にしよう」と強調し、評価する側も「支援者」と呼ぶなど、建設的な対話を大事にされた。この2回の講座を通し、一つのプロジェクトを人を巻き込みながら作り上げていく方法論や思考を学べ、芸術・文化事業に限らず、他分野でも応用できる内容だった。

▽Step1 イントロダクション

各グループによる宿題の発表の前に、アイスブレイクのディスカッションタイムが設けられ「10mの立方体に、一人を入れてできるだけ長生きさせるために必要なものは?」という問いについて話し合った。制限時間のある話し合いの終わりには、有福さんが静かに手をあげ、気づいた人が手をあげて話をやめるという決まりがあるのだが、こういった手法も全体の温度感を合わせ、対話を活発にしていく効果的な技だった。
会場の空気も温まり、6つのグループがそれぞれ5分程度で宿題発表していった。

各グループの掲げたテーマと内容は以下のとおり。

1、子ども芸術家が爆発
制約が多い環境でなく、自然の中で、子どもたちに自由に自分の表現を形にしてもらう。場所は鳥取大学内の自然のある場所。
 
2、夜の天体観察会復活拡充
星に興味がある人もそうでない人も、夜の星空観察を楽しんでもらう。音楽や読み聞かせなど企画を組み合わせて魅力を伝えていく。
 
3、感涙の劇場
自分たちだけでなく、地域が一緒になり、非日常の演出で感動を巻き起こす。演奏者にも地域に長く滞在してもらったり、曲に対する理解を深める講習会なども開催。
 
4、秘密基地つくり隊in鳥取
鳥取の山、海、町の中に秘密基地を設置してヒントを手掛かりに探す。周辺の風景を感じてもらいながら、地域に誇りを持てるようにする。
 
5、鳥取音楽祭
様々なジャンルのアーティスト間の交流を狙う。クラシック、バンド、声楽などジャンルを混ぜながらのステージを作る。
 
6、トリコミ
まんが王国をうたう鳥取県ならではの、オールジャンルの同人誌の即売会を鳥取大学でやる。

▽Step2 他のグループから助言

物事を考えていく時に、どうしても視野が狭くなりがちで、打開策となるのが他の視点となる。各グループのリーダーだけがテーブルに残り、それ以外は他のグループに移動して、意見を出し合った。ここで大事なのが、批判することでなく、客観的にアドバイスをする「支援者」となることだ。話す内容も3段階に分け、「この企画で本当に大切していることは?」「この企画の実現に向けて不足していることは?」「この企画の実現に向けて、最初に取り組むことは?」と進んでいった。同じ内容を3度繰り返して似たアドバイスが集まるよりも、段階によって変えていくことも効果的だった。

「企画が大切にしていること」はまさに企画の軸となる部分であり、軸がぶれると進めていくときにメンバー間のずれや課題が生じやすくなる。「企画に不足していること」は言葉の通りで、資金面など現実的な課題になるポイントにちゃんと目を向ける作業だ。そして、3つ目の「最初に取り組むこと」は、実現に向けて行動していくことが一番大事なことで、「周りに企画の熱意を伝える交流会をしてはどうか?」や「地域の人の理解を求める作業をまずやるべき」などが挙がっていた。

▽Step3 講評する

これらのステップを踏み、グループ内で最終的に意見をまとめて最後に発表したのだが、様々なアドバイスを踏まえたことで軌道修正され、企画もブラッシュアップされていた。「企画内容が大きすぎた。まずは地域を絞ってやっていくことにした」と取り掛かる規模を見直すグループもあれば、「鳥取大学でやろうと思ったが、無理にこだわる必要がなかった」と企画の趣旨に立ち戻ったグループもあった。

最後に、有福さんは「成功しているイメージを描き、具体的に落としこんでいき、何から取り組んでいくのかを考えること。闇雲に積み上げるのではなく、他のメンバーからアドバイスをもらってどういうことを目指していたのかを忘れないようにしてください」と話し、講座を閉じた。

5回にわたる講座も今回で終了し、皆勤賞の30代男性に感想を聞いたところ、「アートは自分と無縁だと思っていたが、物事を捉える視野を広げたいと思って参加した。アートは突拍子もないものではなく、人間への深い理解や緻密な設計もある。そしていろんな視点で、世の中の切り取り方があったり、コラボレーションを生み出していける可能性も感じた」と充実した様子だった。

芸術・文化とは何か。その問いかけから参加者は自分自身に向き合い、それと社会をつなげていく可能性を探った。夢を描くだけでなく、具体的な企画の積み上げ方まで学べたことで、多くを持ち帰った人も多いだろう。芸術・文化は、現代の社会にとって新たな価値観を創造していくものであり、人をつなげていく大きなコンテンツである。それがわかった貴重な講座だった。

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10: アート系ワークショップの学校教育への導入と分析 / 開催レポート http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/10-report/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/10-report/#respond Fri, 27 Mar 2020 06:01:45 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3589

アート系ワークショップを学校教育に 第1回 2019年9月26日[木]

全2回の講座の第1回目として、鳥取大学コミュニティデザインラボ(CDL)を会場に、青山学院大学教授の苅宿俊文を講師として招き、主に以下の内容についてのレクチャーを実施した。簡単なワークショップを交えつつ、第2回の実践的な講座につながる社会的・理論的な背景を学んだ。
①新しい学習指導要領の考え方を知る
②非認知的能力について知る
③SES(家庭あるいは学校の社会経済的背景)という指標から見たアート系WSの可能性を知る
④アート系ワークショップの可能性を事例を通して知る

 

アート系ワークショップをどのように分析するか 第2回 2019年12月17日[火]

第1回でも招いた苅宿氏を講師とし、新たに鳥の劇場の皆さんの協力を得て、鳥取大学アートプラザを会場に、少人数で実践的な内容の講座を行った。
「評価」は、アートマネジメントに関わる人にとっても、アート系ワークショップを学校教育で展開する上で避けては通れない課題になっている。鳥の劇場は、鳥取市立鹿野学園をはじめ、多くの学校現場で演劇ワークショップを展開しているが、本講座では、苅宿氏と鳥の劇場が協力して取り組んでいる、映像を用いた省察活動(振り返りの活動)による先進的な評価方法を専用の映像アプリを利用しながら体験した。

 

事業の成果

講師として招いた苅宿俊文氏は、アートには「するアート=表現」「みるアート=鑑賞」の他に「つかうアート=多様」があると言う。社会生活において必要な「自他理解」「仲間づくり」「コミュニケーション」を「学習」するため手段として、演劇・ダンス・メディア表現などの「芸術表現」すなわち「アート」が有用ということだ。また、苅宿氏は「多様」という言葉には「もともとアートが持っている可能性やわかりづらさ、うさんくささなど『ごった煮』のイメージがある」「『ごった煮』には雑草に似た「力強さやエネルギー」の源泉だ、という意味が込められている」とも言う。今回は、学習指導要領の改訂によって可能性を広げようとしている「学校教育」の中に「つかうアート=多様」を導入していく際に必要な視点を学ぶ講座となった。
具体的には、2回の講座の第1回目で苅宿氏によるレクチャーを受け、第2回目には、現在、鳥取市立鹿野学園義務教育学校での実践を行う鳥の劇場による模擬的な演劇ワークショップを体験しつつ、それを専用のアプリケーションを使って撮影し、振り返り(省察活動)を行いながら、教育的にその映像をいかに分析するかについて学んだ。以上を通じ、学校現場で必要とされる「児童生徒の資質能力の発見定着」の新たな方法を理論的かつ実践的に学ぶことができる講座となった。

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06: School-in-Progress (スクール・イン・プログレス)2019  Living, Making for __________ #03 / 開催レポートについて http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/06-report/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/06-report/#respond Fri, 27 Mar 2020 03:41:48 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3520 開催レポートは、HOSPITALE PROJECT WEBサイトに順次掲載予定です。
こちらからご覧ください。( http://hospitale-tottori.org/blog/ )

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07: 即興音楽とダンスのワークショップ 「わらべ館即興音楽とダンスのワークショップ2020を終えて」 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/warabe_2020last/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/warabe_2020last/#respond Tue, 24 Mar 2020 05:35:23 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3488 このワークショップシリーズをはじめて2年、少しずつ回数を重ね様々なアーティストのワークショップの方法を学び、話し合いを重ねてきた。各回の参加者はたまたまわらべ館に来ていた親子連れや、何回か回数を重ねてきてくださる方、経験者と様々なため、あらかじめ明確なテーマを設定することが難しい。どちらかといえば何をするかよりも、どのように過ごすかが大切になってくる。ファシリテーターとしては柔軟に対応したり、声の掛け方やフォローの仕方が気になって振り返りでもその部分への言及が多く見られた。

通常学校の授業などでは教員が一人で多くの子どもたちを見なければいけない環境にあるが、このワークショップではサポートアーティスト(県内ですでにワークショップを開催するなども行う経験者)が複数人付いているため、自由に遊ぶ環境を保つことができる。ワークショップを多角的に分析する上でも、ある意味贅沢な環境であると思う。

このような自由に遊べる場所が一時的なものではなく、継続的に維持できるようにしていくことによって、子供達の創造性や身体能力の育成にも役立っていくことだろう。鳥取は「森のようちえん」をはじめてとして豊かな自然環境を生かした子育ての先進地でもある。今後も学校教育とはまた異なる形で子供達の成長をサポートし、また、子供達から大人が学び続けるような環境を作っていきたいと考えている。

 

今年度は新型コロナウィルス対策により、2月(新井英夫氏)、3月(金井隆之氏)、そして本来はファシリテーター養成講座の皆さんと一緒に作るはずだった4月のワークショップが開催できなくなった。わらべ館が県および市の機関であることや地域の小中学校の休校処置などに合わせての判断である。しかしながら鳥取ではこの豊かな自然がある。屋内の密閉空間で人が触れ合う活動を避ければ、遊ぶことも可能であろう。今後そのようなそと遊びなどの可能性も踏まえ、自由な表現活動の可能性は模索していきたい。また、今回中止になった会は来年以降何らかの形で補って開催していく。

 

最後にご参加くださったみなさんに感謝するとともに、この企画はわらべ館の協力があって成り立っていることにも感謝したい。県や市の様々な団体、施設が大学と助け合いながら地域について考えていくという意味でも協働の場となっていると感じている。ありがとうございました。また、ぜひ、ともに遊びましょう。

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08: 鳥取の美術&文化リサーチ講座「現代美術を学び、鳥取美術&文化を調べる」 / 『芸術と文化 鳥取2020』完成報告 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/08-report_book2020/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/archives/news/08-report_book2020/#respond Tue, 24 Mar 2020 05:14:51 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3457

 

『芸術と文化 鳥取2020』
発行|「鳥取美術&文化リサーチ講座」実行委員会
編集|筒井宏樹
デザイン|谷澤陽佑
表紙イラスト|小林真依
発行日|2020年3月31日|A5|111頁

本誌は、鳥取大学の公開講座「地域を知り、地域で実践するアートマネジメント講座2019」のなかの「鳥取美術&文化リサーチ講座」参加者たちによって執筆されました。10月から1月まで4ヶ月間にわたって開講された講座ですが、鳥取の美術&文化についてリサーチを行いつつ、編集デザイン会議(ゲスト:木村稔将)、発表会(ゲスト:山本浩貴)を経て、最終的な成果として本誌が発行されました。その間、現代美術系のゲスト(きりとりめでる、永田康祐、奥村雄樹、星野太、黒瀬陽平&藤城嘘、筧菜奈子)によるトークもあり、毎回長時間でしたが、ご参加いただいたみなさま、たいへんお疲れさまでした!

最後に本誌のタイトルは美術批評家クレメント・グリーンバーグの著書にちなんでいます。また、本誌の表紙デザインは、鳥取で1912年から刊行された文芸誌『我等』(池本利美、松田晃八といった美術家も参加)をオマージュしていただきました。川上貞夫によれば鳥取初の未来派雑誌だったそうです。では、次巻もよろしくお願いいたします。

 

目次|
にゃろめけりー。 鳥取の古着屋さん『Redrum』
安藤隆一     民芸の心を求めて
戸塚清斗     くらよしアニ巡り!!
木下直      美術作品はそこにある
宮北温夫     《鳥取城跡遠景》(イラスト)
白方欣江     ART × CAFÉ
高橋明子     高木東六の妻(清子)
佐伯恵里     私から見た鳥取県立博物館
蔵多優美     「まる金」のこと
落合麻衣     まちあるき 鳥取のケーキ屋さん
宮北温夫     《用瀬に映えるにぎやかさ》(イラスト)
高橋智美     鳥取のお手玉遊び「ずずこの唄(こんぼしの唄)」
筒井宏樹     徳持耕一郎 イノベーターとしての足跡

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09-1: 地域の記憶を記録する−メディア編 特別講座開催レポート(佐々木) http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/news/09-1-media-sasaki/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/news/09-1-media-sasaki/#respond Tue, 24 Mar 2020 04:10:10 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3452 鳥取大学にんげん研究会(通称「にんけん」)が企画・運営する「地域と文化のためのメディアを考える連続講座」の四年目は、「メディアをつかって、目に見えないものを、拡張する。」をテーマとして、三名の講師にお話を伺った。初回は12月4日(水)、tampen.jp編集長の田中大裕さんによる「短編アニメーション・ワールドの探索地図」。第二回は1月29日(水)、グレイスヴィルまいづる施設長の淡路由紀子さんによる「豊かな対話による、ケアの現場づくり」。第三回は2月12日(水)、NPO法人スウィング理事長の木ノ戸昌幸さんによる「身体で考え、社会へ飛び出す活動体」。本連続講座シリーズの伝統ともいいうる、一見ばらばらな、多様な分野で活躍する講師陣である。

あえて各自に共通する要素を見出すとするならば、それは自分自身を一つのメディア(媒介)として捉え、活用していく姿勢だろう。彼らは「○○とは何か」「○○はこうあらねばならない」式の限定に向かう思考ではなく、「××も○○である」「××が○○であるならば」式の拡張に向かう思考をもって活動しているように見受けられる。あらかじめ不動の理想や目標を掲げて突き進むのではなく、実際に出会った人や物、起きた出来事を受け取ることを出発点として、そこから何ができるか考えること。それぞれの長所や短所、独自性や普遍性を解釈し、適材適所に配置し、変換し、つなげていく役割を担うこと。「現場」の知や「経験」の知を重視しつつも、それが却って自分や他人の未来を狭めてしまう結果にならないように、常に自分自身の振る舞いを点検し、あらゆる可能性に向けて開かれた状態であるための努力を惜しまないこと。付け加えておけば、本講座のコーディネーターである蛇谷りえさんもまた、まさにこうした「メディアとしての人間」を実践する人物であり、共通した問題意識をもつ講師が集うことは半ば必然であったといえるだろう。

また今年の講座で強く印象に残っているのは、質疑応答の場面である。一般参加者の方々の質問はどれも具体的かつ切実で、講師もまた、ひとつひとつの問いに真摯に向き合い、公の場では語りづらい話題にまで踏み込んでくださることも少なくなかった。講座に関わった者たちがみな受け身にならず、能動的・積極的に場に関わることによって、互いに学び合うことができる、豊かな時間が生まれていたように思う。

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09-1: 地域の記憶を記録する−メディア編 12/18開催レポート(今林) http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/news/09-1-1218-imabayasi/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/news/09-1-1218-imabayasi/#respond Tue, 24 Mar 2020 02:56:56 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3437

「発表会」

キミからみえる カレをみる
みえぬような みえるような

有限のいのちが ほんの僅かに触れ合った
キミが手をかけ ほんの僅かに切り取った
丸めてこちらに投げかける 受け取ったのは何十名
キミとカレの触れ合いが 記憶に響いた何十名

触れ合う時間は限られる メディアは多数に響かせる
響きは揺らいで曖昧に 微かなものへとなるけれど
有限多数の未来へと 絡んで生き延びその先に
思わぬところへたどり着く

キミにはみえない場所に行く
確かな響き 刻まれた

 

今林由佳(いまばやし・ゆか)

1985年生まれ。アニメーション作家・絵本画家・イラストレーター。千葉県船橋市で育つ。東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業。同大学大学院映像研究科アニメーション専攻を修了。NHK “おかあさんといっしょ” にて『メダルあげます』、“みんなのうた” にて『ピヨの恩返し』などの子供向けの映像制作を担当する⼀⽅で、戦時、福祉、医療の領域でドキュメンタリーなどを基調とした映像を多く⼿がける。著書に、しかけ絵本『どうぶつぱっかーん!』シリーズ(わだことみ・作/東京書店)、『うれしいひのいただきまあす』(わだことみ・作/ハッピーオウル社)がある。

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09-1: 地域の記憶を記録する−メディア編 12/18開催レポート(金川) http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/news/09-1-1218-kanagawa/ http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/news/09-1-1218-kanagawa/#respond Tue, 24 Mar 2020 02:54:10 +0000 http://www.rs.tottori-u.ac.jp/artculturecenter/artmanagement2019/?post_type=news&p=3434  にんげん研究会最終発表会。鳥取大学で19時開始。コーディネーターの蛇谷さんが最初の挨拶で「これからおこなわれるのは論文の発表でもないしアート作品の発表でもありません。ではいったいこれは何なのかというと、それは見て考えてもらえるとうれしいです」という内容のことを言った。

全部で一七人の学生が発表した。それぞれが自分の興味をそれに合ったかたちで表現しようと工夫していて、表現の多様さに驚いたし、自分も何かをつくって発表している人間として刺激をもらった。取材対象の人に宛てた手紙というかたちで発表する人もいれば、取材対象の人を自分で演じるという発表をする人もいた。映像を使う人や、写真を使う人もいたし、パワーポイントを使ったオーソドックスと言われるようなかたちでの発表の場合でも、そこでの話の組み立て方やイメージの組み立て方にそれぞれの個性があらわれていた。見ていて楽しかった。何よりも、学生たちも人の話を聞くという経験を実はちゃんと面白がっていたことがわかって、それがとてもうれしかった。

アンドレ・ブルトンは『ナジャ』という作品のなかで小説家のヴィクトル・ユゴーのエピソードについて書いているが、私は今回の発表を聞いてそのことを思い出した。

ユゴーはパートナーであったジュリエット・ドゥエルと毎日同じ道を散策し、大小ふたつの門がある家の前に来ると、ユゴーが大きな門を指して「車馬用門です、マダム」と言い、今度はドゥエルが小さな門を指して「徒歩用門です、ムッシュー」と答えるというやりとりを、数年間にわたって繰り返していた。ブルトンはこのエピソードを紹介したのち、「ユゴーの作品をめぐるどんなにすぐれた研究であろうと、彼が何者であったか、彼が何者であるかについて、これほどよく理解させ、驚くばかりに実感させるものがあるだろうか」と書いている。このユゴーのエピソードに似たような話が今回の発表ではたくさん聞けた。ほぼすべての学生の発表に感銘を受けるところがあり、今後何かのおりに思い出したくなるような話がいくつもあった。

今回の発表とこれまで見させてもらっていた7月や10月の発表とのあいだには大きな落差があったと思った。正直なところ、7月10月のときには学生たちが誰かの話を聞くということを本当のところでおもしろがっているのかどうかがよくわからなかった。それは7月と10月のときは時間が2時間と限られていたことが関係していると思う。

 

学生全員の発表が終わり、最後の締めの挨拶でも、蛇谷さんは総括のようなものはしなかった。これがにんげん研究会の基本的なスタンスなんだと改めて思った。いい論文や作品をつくるということを目指すのではないが、かといって、学生が豊かな経験をすることに重きを置いているのかというと、そういうことを明言するわけでもない。にんげん研究会が目指すものを明言しない。学生に方向性を与えようとしない。そうすることで、学生側の主体性を引き出そうとしているのかもしれないが、そういうこともはっきりとは言わない。

にんげん研究会がこういうスタンスをとっているのは、いわゆる指導をしてしまうことによって学生の可能性を狭めないように配慮してのことだろう。その気持ちはわかるしとてもおもしろい試みだと思う。ただ、そのやり方に消化しきれない何かを感じることもあった。たしかに教師の言葉が学生に強い意味をもってしまうことはある。でも、教師と言えどもそれは所詮は他人のひとことに過ぎないのであって、あまり配慮し過ぎずに思ったことは伝えるべきなのではないだろうか。私のような部外者の無責任な立場からすると、そう感じる部分がなくはなかった。実際の現場で学生と責任をもってかかわっている先生たちは安易にこんなことは思えないし言えないのだと思う。先生たちが親身になって学生のことを考えているのはよく伝わってきた。

また、そもそも学生に方向性を与えないということが本当に可能なのだろうかということも思った。それはおそらく程度の問題に過ぎないのかもしれないが、その程度の問題こそが重要なのかもしれない。にんげん研究会のこのやり方だからこそ実現できているものはたしかにあった。実際、学生たちの発表はおもしろかった。

今年のにんげん研究会では、私は「リポーター」という何なのかよくわからない立場から参加させてもらったが、こういう微妙な立場を設けてわざわざ外部をつくるいうのはとてもおもしろいと思った。今回は自分はあくまでリポーターとして外部から眺めるという立場にとどまったが、外部の人間としてもっと内部に参加していくということができればなおいいのかもしれない。


▲にんげん研究会に参加していた学生・岸野祐二郎くんが撮影した全体写真

 

金川晋吾(かながわ・しんご)
1981年京都府生まれ。写真家。神戸大学発達科学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。三木淳賞、さがみはら写真新人奨励賞受賞。2016年青幻舎より『father』刊行。近年の主な展覧会、2019年「同じ別の生き物」アンスティチュ・フランセ、2018年「長い間」横浜市民ギャラリーあざみ野、など。2020年文化庁新進芸術家海外研修制度でアメリカに渡航予定。

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